人が生きていくために大事なことの一つに、「食べる」ことがある。年齢や健康障害の有無にかかわらず、「食べる」ことは、栄養を体に取り込み、生命を維持し、日常生活の原動力となる重要な営みである。今回は「食べる」と看護の関係性について、東京情報大学 看護学部看護学科の大石朋子講師に話をうかがった。

口から「食べる」ことの重要性

年齢や健康障害の有無にかかわらず、「食べる」ことは、栄養を体に取り込み、生命を維持し、日常生活の原動力となる重要な営みである。自分の口で食物を「食べる」ことは、単に栄養を取り込むだけではない。「食べる」ことには、美味しい、楽しい、嬉しいなど「快」の感情がともなっていて、心身ともに充実感が得られる反面、その機能が低下している場合には誤嚥(ごえん)や窒息というデメリットが生じる。

「誤嚥とは、食物を口に運び、歯で粉砕し、舌で咽頭に送り込み『ごっくん』と飲み込むときに『ごほっ』とむせてしまうこと。本来は誤嚥して気道に食物が流れ込まないよう、無意識に喉頭蓋が軌道にふたをする仕組み(嚥下反射)になっていますが、このどこかに支障がある状態を『摂食嚥下障害』といいます。看護職は、口から食べる営みを最大限に尊重し、単に生物学的生命維持として食べる援助ではなく、社会的存在としての人間の営みを重視した援助が求められます。摂食嚥下障害のあるご本人やそのご家族の気持ちを尊重しながら、肺炎のリスク管理をしたうえで、ご本人やそのご家族の気持ちに寄り添い、根気強くリハビリテーションを行っていくことが専門職としての役割だと考えます」と話すのは、東京情報大学 看護学部の大石朋子講師だ。

 

情報活用による「食べる」ことの支援

「看護師が行う『食べる』ことへの支援は、患者に寄り添いながらも安全であることが求められています。そのためには絶え間なく観察し、患者の状態を正確で迅速に判断することが鍵となります。この『観察』『判断』を、情報技術を活用することで効果的に行うことが可能となります」

東京情報大学の遠隔看護実践研究センターでは、指先に装着する端末などで生体情報をモニタリングし、肺炎の予兆を捉えるための研究を行っている。端末から得られる情報は、脈拍、血中酸素飽和度、血圧、睡眠、疲労、情動など、身体の生理的状況の変化や心理的状態の変化を経時的かつ瞬時に捉えられるという特徴がある。これらの生体情報と人工知能(AI)技術を活用し、肺炎の予兆となる誤嚥を検知して病状悪化を防ぐ看護を展開しようという試みだ。具体的には、AI技術における学習機械に対し、生体情報データから誤嚥の発生確率を学習させ、次に誤嚥発生の頻度や時間的パターンなどの特徴から肺炎の発生確率を学習させる。

こうして学習させた機械によって、未知の生体情報から肺炎の予兆となる誤嚥を捉えるという方法である。 

「この方法でモニタリングした情報をもとに誤嚥の予兆を捉えられるようになれば、誤嚥を起こす前に予防対策としての看護援助を行うことができるようになります。同時に、誤嚥の可能性を正しく判断できるようになれば、看護師をはじめとした医療者が、必要以上に誤嚥を警戒することがなくなり、より積極的な『食べる』ことへの支援ができるようになると考えています」と大石先生は話す。

 

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