7月1日から募集開始となる「地域の伝承文化に学ぶ」コンテスト。審査員を務める小川 直之先生(國學院大學教授)から、応募の際のポイントを教えてもらった。今回は「学校活動部門」で取り組む際に知っておいてほしい「伝承文化」を学ぶことの本質を紹介しよう。

教科書「を」学ぶから、教科書「で」学ぶへ

ー小川先生が学校活動部門に期待していることは何でしょうか?

私が「学校部門」に期待するのは、地域の伝承文化を組織的に取り上げることで、高校生たちの学びや活動がどう変わったかを捉えて、評価することです。「学び」のあり方だけでなく、高校生たちが地域と積極的に関わり、さまざまな地域活動にも参加するようになったという結果でも良いと思います。

ー学びや活動の変化を促すにはどうすれば良いでしょうか?

自分が学ぶ高校がある地域にどのような伝説があるかを調べる時、伝説のある現地に行って、その場所がどういうところなのかについて、伝説を伝える人たちに会ってインタビューする、郷土誌などの文献を調べ、その特徴を分析、考察していくと思います。

高校での学びは、ほとんどの教科に教科書があり、その内容を理解し、考えるというのが大半といえます。その内容は全国一律的ともいえますが、自分たちの地域について調べ、分析、考察していくことで、必然的に教科書に書いてあることが、どうしてそう説明できるのかという疑問が出てくることを期待しています。つまり「教科書の内容を学ぶ」という学習のあり方が、「教科書で学ぶ」ということに変わってきて、教科書の一文から描き出せる疑問や捉え方が変わってくるはずです。このようにして、「学び」の基本姿勢が、地域の伝説研究によって変わっていくと考えています。

写真提供:小川直之「神奈川県大磯町西小磯の七夕行事」
画像提供:小川直之教授 「岩手県花巻市の飢饉死者供養塔(江戸時代)」

 

高校教員から生徒に伝えてほしいこと

地域の伝承文化に学ぶコンテストに、学校やクラス単位で参加いただくことを検討している高校の先生には、以下のことを押さえていただきたいです。

1)調べたいことがある現場へ足を運び、自分の目や耳で現実を確認し、情報を集め、ここから考えるということを心がける

2)コピーアンドペースト、Web情報だけでは知識は身につかず、自分の力で考えることもできない。

地域社会が伝えているさまざまな文化に関心を持つ高校生が一人でも増えることを願っています。

 
【小川直之】
國學院大學文学部日本文学科教授。研究分野は民俗学で、国内のみならず海外でも日本の民俗文化を数多く講じている。現職として中国・南開大学で客員教授を務めるほか、インド・ジャワハルラルネルー大学の客員教授などを歴任。著書に『折口信夫 死と再生、そして常世・他界』『日本の歳時伝承』(角川ソフィア文庫)などがある。
 

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