~上位入賞者には海外研修のチャンスも!~
JICA(独立行政法人国際協力機構)が主催する「中学生・高校生エッセイコンテスト」は今年で53回目。全国の高校に知れわたっており、昨年は、高校生の部では3万近い作品が寄せられた。今年は6月12日(木)より募集を開始。このコンテストを通じて発展途上国への関心が深まった福井県の高校生 斉藤実希さん、毎年、同コンテストに100人ほどが応募する川崎市立橘高等学校の取り組みを紹介する。
応募するまでの過程を大事にして
「発展途上国への興味がとても強まりました」。このように話すのは、福井県立高志高等学校3年の斉藤実希さん。1年の時に応募し、2012年度審査員特別賞を受賞した。
小学生の頃から英語教室に通い、イギリスや韓国に旅行した経験もあり、外国に対する興味は強かった。ただし、途上国についてはほとんど知らなかったという。
このエッセイ執筆が夏休みの宿題として出された後、斉藤さんは自分の身の回りのものを違う視点から見てみようと心がけた。そして、ある衣料品チェーン店で、着なくなった洋服を主に途上国に寄付するリサイクル活動を行っていることを知る。それをきっかけに、途上国の妊産婦の状況などを調べ始めた。アフリカでは自分と同じ10代の子が出産したり、妊産婦の死亡率が非常に高い国があったりする現実にショックを受けつつ、「清潔な洋服を着て可愛い赤ちゃんを産んでほしい」と思った。
早速、たんすに眠っていた多くの洋服を洗濯して寄付。その経験をエッセイにまとめ、優秀作品に選ばれた。「途上国に対する理解をもっと深めようと調べたりしたことで自分の視野が広がったので、応募するまでの過程が大事なのかなと思います」。
印象深かった現地の人々の笑顔
エッセイコンテストでは、上位入賞者には副賞として約1週間の海外研修が贈られる。斉藤さんは昨年の夏休み、フィリピンを訪問。青年海外協力隊員の活動現場の視察などを行い、「途上国支援」に対する考え方も変わったそうだ。「フィリピンに行くまでは募金をすればいいくらいの感覚でしたが、実際に自分の目で見て、行動したいと思うようになりました」。
街のあちらこちらでストリートチルドレンや物乞いの親子などを見かけ、何もできずに通り過ぎるのがつらかったという斉藤さん。だが一方で、特に印象に残っているのが現地の人々の笑顔だった。「街の人たちはみんな笑顔で、一生懸命に生きていることを目の当たりにして、その姿にとてもひかれ、元気をもらいました」と振り返る。
現在は、最後の大会に向けてバドミントン部の活動に全力を注ぐ斉藤さん。フィリピンから帰国後、途上国に関する情報に敏感に反応するようになり、大学は国際関係の学部に進学したいと望んでいる。「フィリピンにはまた行きたいですし、カンボジアやタイといった他の国にも行ってみたい。現地を自分の目で見て、自分の視野をもっと広げていきたいです」と夢は膨らむ。
途上国の研修員との交流などを題材に
川崎市立橘高等学校 五十嵐章浩先生に聞きました
全校生徒800人余りの川崎市立橘高等学校は、普通科、国際科、スポーツ科という3学科の併設校。開設14年目の国際科では、当初からコミュニケーション能力の育成や異文化・日本文化理解を教育の柱としている。異文化理解の一環で、途上国に対する理解を深めることを重視し、JICAとの接点も多くある。
JICA施設(JICA横浜)を訪問して途上国について学ぶ機会をつくっているほか、毎年、途上国からの研修員が同校を訪れて交流活動も行っている。昨年は、15カ国ほどの研修員が訪問し、研修員が自国について話したり、国際科の生徒が日本文化を紹介したりするなどした。
エッセイコンテストは国際科の夏休みの宿題と位置づけ、同校からは毎年100人近くが応募し、学校賞を受賞している。中には、中学生の頃に応募したことのある生徒もいるという。生徒の多くが題材として選ぶのが、JICA横浜の研修員との交流活動。国際科を担当する五十嵐章浩先生は次のように話す。「生徒たちは、研修員の話を聞き、自分でもその国を調べ、自分たちがいかに恵まれているかに気づいたり、将来、途上国支援をできるような立場になりたいと思ったりします」。具体的な経験をもとにエッセイを書くためか、同校から入賞者も出ている。