「人生100年時代」という異次元の高齢化を迎える今、現在の高校生の約半分以上は100歳まで生きると予想されている。長い人生をどう生きるか、それには「志」が大切だ。人生100年時代をどう生きるのか、それを支えるあなたの志はどのようなものかを表現するこのコンテスト。今年も多くの応募があるなか、各賞の受賞者が決定した。

★過去のテーマと入賞者が多摩大学のホームページで閲覧できます。

【小論文部門】自分の気持ちと素直に向き合い、祖父との関係を書いた作品が最優秀賞に

小論文部門は、応募総数1301点の中から、最優秀賞1名、優秀賞1名、佳作5名、入選6名が選ばれた。

最優秀賞は「『心』を大切に」と題して、人生100年時代をどう生きるかというテーマに沿って書いた福留三咲さん(福岡・筑紫丘高校2年)の作品だ。コンテストのテーマを見たときに真っ先に祖父との関わりを思い浮かべた福留さん。小さい頃から宿題を見てもらうなど深い関わりがあった祖父との関係を振り返り、それを通じて感じたことを作品に盛り込んだ。「長い人生では大変なこともあるかもしれません。でも、自分『心』を大切にすればいつでも幸せを感じることができるのではないでしょうか」と福留さん。作品を仕上げていくなかで、改めて祖父に対する思いや長生きをするということについて見つめなおすことができたという。

「自分の伝えたいこと・考えていることがどうすれば相手にうまく伝わるだろうかということを常に意識し、素直に文章に表現することがポイントだと思います」とアドバイスをくれた。

●第11回高校生小論文・スピーチコンテスト入賞作品 (※両部門受賞)

【スピーチ部門】最終選考6名の高校生が自らの「志」を熱くスピーチ

2019年11月9日に開催されたスピーチ部門表彰式

11月9日、さわやかな秋晴れの空の下、多摩キャンパスのT-Studioでスピーチ部門の最終選考会と表彰式が開催された。

はじめに主催者が「全体的な表現力・構成力」「テーマに基づき優れた感性や個性が感じられるか」「次世代を担う若者として希望や期待を感じられるか」「実現可能性があるか」の4つの観点で総合的に審査を行うことを説明。続く最終選考会では、6名の高校生が熱弁をふるった。

厳正な審査の結果、最優秀賞1名、優秀賞1名、佳作4名が選ばれ、それぞれ実行委員長の杉田文章副学長より表彰状を受け取った。

●第11回高校生小論文・スピーチコンテスト入賞作品 (※両部門受賞)

【最優秀賞】好奇心は生き生きとした人生を歩むための原動力

スピーチ部門 最優秀賞 郷右近夏海さん

最優秀賞を受賞したのは、「好奇心と100年を生きる」と題したスピーチをした郷右近夏海さん(神奈川・大船高校3年)。

冒頭で能「敦盛」の一節「人間五十年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」を引用しつつ、人生100年と言われるようになった今、長い人生をどう生きたらよいのかと問いかけた。

スピーチのなかで郷右近さんが出した答えは、「生き生きとした人生を歩むために、人間は好奇心を持ち続けるべき」というもの。特に高齢者には絵を描く、コーラスクラブに入る、読んだことのないジャンルの本を読むなど、積極的に新しい扉を開けようとしてほしいと訴えた。

【優秀賞】自身の体験から導いた「志」

スピーチ部門 優秀賞 関 夏楠さん

関夏楠さん(東京・大江戸高校3年)は、「無理せず生きる」と題したスピーチで優秀賞を受賞した。

持病があり、中学生のときは学校生活になじめなかったという関さん。無理をして学校に通っていたが、ある朝、起き上がることができなくなったことをきっかけに「無理せず生きること」の大切さに気づいた。

夢は大学で心理学を学び、公認心理師の資格を取得して、援助を必要とする人を支えることだ。関さんは「無理はしない。けれど、自分としっかり向き合う。これが私の志です」とスピーチを結んだ。

スピーチ部門審査委員長下井直毅教授による講評

スピーチ部門審査委員長 下井直毅教授

本日はありがとうございました。自らの体験に基づく素晴らしいスピーチが多く、審査に大変苦労しました。

なかでも最優秀賞の郷右近夏海さんのスピーチは、「『儚いものから、長いもの』になった人生では、好奇心を持ち続けることが大切」というメッセージがとても響いてくるものでした。

抽象的な話にせず、身近で具体的な例を挙げたことで、高校生らしいまっすぐな思いがより伝わってきたのもよかったと思います。

優秀賞の関夏楠さんは、心のご病気であるご自分の体験から出発して、「常に最大限の力で走り続けねばならない」という暗黙のルールに疑問を呈しました。

大変落ち着いた自然体のスピーチだったこと、心理学を学びたいという目標が明確だったことも素晴らしく、優秀賞としました。中高生のために「無理をしない場所」を作りたいとのこと。ぜひ実現してほしいと思います。