(前段左から)樋口裕一教授、髙品友綺さん、椿野瑞希さん、長友彬華さん、諸橋正幸副学長、久恒啓一学部長 (後段左から)森田寛康さん、西野翔さん、近藤千朋さん、安室紗貴さん、下井直毅教授

実現性のある志に高い評価 英語で書かれた作品も入賞

「現代の志塾」多摩大学主催の第6回「私の志」小論文コンテストの表彰式が11月9日、多摩キャンパスで開催。1166作品の応募の中から、実現性のある志や文章力が高く評価されて入賞した生徒たちが、新設の「T-Studio」に集まった。

今年、創立25周年を迎えた多摩大学。表彰式の会場となった「T-Studio」は25周年を記念して建設されたもので、白を基調としたシャープな外観が印象深い。公式の式典において使用するのは初めてで、すべてが真新しい中で表彰式が行われた。

このコンテストは、「高校生に『志』を考えるきっかけを提供し、志を持つ学生の育成に努める」ことを目的として創立20周年の年に始まり、今回で6回目となる。回を重ねるにつれて全国の高校生に知れ渡り、今回の応募は1166作品。多摩大学の教員たちによって厳正な審査が行われ、入賞作品が決まった。

表彰式では、コンテストの実行委員長を務める、経営情報学部の樋口裕一教授が講評を行った。「審査しながら常に思うが、志と文章力の両立は大変難しい。その両立には志を持っているだけでなく、他者にわからせる力を持つことが重要で、それには自分の考えを整理できていることが非常に大切」と小論文を書くうえでのポイントを紹介。そして、「みなさんが若いうちにそうした経験ができたことはとても素晴らしい。審査ではかなり迷い、誰が最優秀賞になってもおかしくないくらいの作品ばかりでした」と入賞者を称えた。また、今回は英語で書かれた作品が優秀賞を受賞し、グローバルスタディーズ学部のウィリアム・シャング学部長からも講評が寄せられた。
 続いて、樋口教授より各入賞者に表彰状が授与され、一人ずつ、「自分の夢に一歩近づけたような気がします」などと受賞の喜びを語った。

最優秀賞は法医学者を目指すという志

最優秀賞を受賞したのは横浜雙葉高校2年の椿野瑞希さんで、タイトルは「医と人をつなぐ新しい矢印」。解剖関連の年間予算が3億円という日本の法医学を取り巻く厳しい状況や、一方で医学全体への貢献度が非常に高い背景に触れながら、法医学者になりたいという志を小論文にまとめた。医療の世界を描いた小説などの影響で、高校1年の時から医者を志すようになったという椿野さん。「法医学は絶対大事なんですよ。ただ最初から専門分野に偏るのではなく、臨床などの知識も深めていきながら、最終的には法医学の地位がもっと上がるようにしていきたいです」と力強く語った。

優秀賞は、宮崎第一高校2年の長友彬華さんによる「日本語を誇りに」。母親の読み聞かせの日常で育った長友さんは、本だけでなく日本語への関心も以前から人一倍強かった。応募作では、若い人たちがよく使う「やばい」に関する考察や日本語の婉曲表現の素晴らしさなどについて書いた。国語教師を目指す長友さんは、「日本語が大好きで、将来この道を進もうという思いが今回さらに強くなりました」と笑顔で話した。

もうひとつの優秀賞は、中央大学高校2年の髙品友綺さんの「We live together.」。幼いころから英語が得意という髙品さんは、生物の研究者になりたいという志を英語でつづった。小学生の時に参加した大学のイベントでイカの解剖を行って以来、海洋生物に興味を持ち、中学ではプランクトンの研究に熱中。「今までの過程をまとめることで、今後の進路もより考えられるようになりました」と話す。今回の受賞によって英語力にも自信がつき、海外での研究も目標のひとつになった。

自分は何になりたいかを考えるきっかけに

佳作や入選に選ばれた生徒たちも明確な志を持つ。ある生徒は遺伝子組み換えの研究を行いたいという志を抱いており、また実家が養豚業を営む生徒は親とは異なる独自の養豚ブランドをつくりたいと考えている。

審査員の諸橋正幸副学長は「単なる憧れではなく、実現性のある志について書かれた作品が多かった。自分が関心を持つ専門分野のことをわかっていて、問題意識も高い」と評価。最後に、「今の時点で志していることがそのまま続くとは限らないが、今回の小論文が常に自分は何になりたいかを考えるきっかけになって成長していけば、日本の未来は明るくなる。みなさんが日本を背負って立つことを期待しています」と入賞者たちにエールを送った。

 

過去のテーマと入賞者が多摩大学のホームページで閲覧できます。
http://www.tama.ac.jp/info/kokorozasi/index.html