渡邉先生が選ぶ!『古事記』エピソードベスト3!

國學院大學古事記学センターでは、「第3回古事記アートコンテスト」を開催している。『古事記』を読んで、好きな場面を絵画やイラストにするというものだ。『古事記』の中で印象的な場面を、渡邉先生に3つ選んでもらったので紹介しよう。

1 日本誕生の様子が描かれている?

天地の始まりのとき、高天原という場所に出現した神々のうちの二神がイザナキとイザナミ。下界の修理固成を命じられ、天界から天の沼矛を下界に指し下ろして掻き回し、引き上げたところ、矛の先から滴り落ちた塩が重なって島(オノゴロ島)ができた。二神はオノゴロ島に降り立ち、男女の交わりをして「水蛭子(ひるこ)」と淡島を生んだが、水蛭子は不出来だったため、葦船に入れて流してしまった。

その後、婚姻のやり直しをし、あらためて国生みを開始。そのときに生まれたのが「本州・四国・九州・淡路島・隠岐島・壱岐島・対馬・佐渡島」だった。さらに6つの小島を生み、その後はさまざまな神々を生んだ。

(渡邉先生)上巻の初めに出てくるシーンで、日本の成り立ちが描かれています。驚くべきなのは、当時すでに佐渡や対馬、壱岐なども含めて日本であるという認識がされていたこと。逆に北海道は出てきません。当時の人々にとっての日本の範囲を伺い知ることができる場面ともいえます。

 

2 夫婦喧嘩が人口増加の起源?

イザナミが生んだ神々の中にいたのが火の神・カグツチ。このときの火に身を焼かれイザナミは死んでしまう。イザナミを連れ戻すためイザナキは黄泉国に向かった。

「黄泉神に相談してくるからその間は中を覗かないでくれ」とイザナミに言われたイザナキだが、ついつい覗いてしまう。そこで見たのは、蛆がたかり体の8箇所に恐ろしい雷神が生じているイザナミの姿だった。驚いたイザナキは逃げ出すが、怒ったイザナミは追いかけ、イザナキが塞いだ大きな岩を間に挟み、口論となる。

「1日に1000人を縊(くび)り殺す」というイザナミに対し、「ではこちらは1日に1500の産屋を建てる」というイザナキ。この夫婦喧嘩が、人口増加の起源になったのだという。

(渡邉先生)「中を覗かないで」というイザナミの言葉を裏切り、ついつい覗いてしまうイザナキ。その結果、恐ろしいことに……。この展開も、たとえば「鶴の恩返し」などの昔話に出てきますね。このように『古事記』には後の物語の原型ともいえる描写がみてとれます。

 

3 アマテラスとスサノヲの大喧嘩

黄泉国から逃げ帰ったイザナキは、けがれを祓うため禊(みそぎ)をする。そのときに身につけていたものや体に付着していたものを払ったところ、さまざまな神々が出現。最後に左目を洗ったときに出現したのがアマテラスで、鼻を洗ったときに出現したのがスサノヲだった。

アマテラスは、皇室の祖神とされており、「天の石屋に閉じこもってしまう」エピソードは有名だ。その原因となったのがスサノヲとの姉弟喧嘩。スサノヲがアマテラスに会いに行ったところ、アマテラスは「弟は国を奪いに来たに違いない」と疑った。その後、それぞれの主張を巡って争った末、スサノヲは暴れだし、田を破壊したり、糞を撒き散らしたりしたのだそうだ。

(渡邉先生)アマテラスは、このスサノヲの乱暴を見て畏れ、天の石屋に閉じこもり、その結果、天上界も地上も真っ暗闇になってしまいます。この後どうなったか? 八百万(たくさんの)神々が来て、天の石屋の前で大騒ぎをします。この場面は祭祀の原型ともいわれています。賑やかな様子もさることながら、登場する多くの神様の細かな描写も必見です。

このほかにも、「スサノヲのヤマタノオロチ退治」や「因幡の白兎」など、有名なエピソードが続く『古事記』。ここまでで紹介してきたように、あらすじを読むと驚きの描写が満載だ。國學院大學の「古事記学センター」では、上巻~下巻までのあらすじを掲載しているので、自分自身で読んでみるといいだろう。

「第3回古事記アートコンテスト」作品募集中!

國學院大學古事記学センターでは、「第3回古事記アートコンテスト」を開催中(11/30当日消印有効)。日本文化の根本を理解する鍵となる『古事記』に関するイラストや絵画の制作を通して、『古事記』への理解と日本文化への関心を促すことを目的としている。

「絵画化・イラスト化は、読んだ人がどのような解釈をするかを表すアート手法だと考えています。高校生の皆さんが想像した、『古事記』の新たな世界を、楽しみにしています」と渡邉先生。あらすじを読んで気に入った登場人物やシーンがあれば、イラスト・絵画で『古事記』の世界観を自分なりに表現してみてはいかがだろうか?

◆「高校生部門」入賞作品 その他の入賞作品はコチラ

【特選】「大國主神と白兎」半戸健太
【入選】「集い」鈴木知慧
【入選】「口誦撰録」村山凪沙
【佳作】「イザナギとイザナミの鬼ごっこ」福田晏那
【佳作】「天の岩戸隠れ事件」山本愛結奈
【佳作】「元始、女性は太陽であった」植田理紗子
【審査員特別賞】「希望のアマテラス」桑畑莉花
 
 

★第3回古事記アートコンテストの詳細はコチラ