地震などの自然災害、企業の倒産、個人情報の流出……。私たちが生きていく中で、起きてほしくないことが起こる可能性も、残念ながらあるのが現実だ。こうした「生きていくうえでのリスク」を想定し、対策を立てることはできるのだろうか。千葉工業大学社会システム科学部金融・経営リスク科学科の安藤雅和教授に話を伺った。

 

「さっそくですが中澤さん、友達の信用度は測れると思いますか?」。安藤先生からの想定外の質問に、中澤さんは戸惑い気味。「できたらいいのですが…。信用というのは感覚的なものなので、測るのは難しいのでは?」と答えた。「確かに。でも、金融機関や投資家にとって、信用できない相手に融資したり投資したりするのはリスクが高いですよね。もしも相手が倒産したら、お金は戻ってきませんから。そこで活用するのが、『財務データ』です」

多くの企業では、資金をどのように集め、どう事業に生かし、どんな結果が得られたかという財務データを年1 回公開している。そこから得られる情報をうまく組み合わせ、特定の数式に当てはめて計算すると、企業の信用度を数値で表せるのだ。

例えば、企業がどれほど借金しているかを示す「負債比率」に、過去に倒産した企業などの経営状態から算出した「倒産確率」を組み合わせる。すると、負債比率がどれくらいだと、倒産の可能性がどの程度あるかが予測できる。これが相手の信用度を測る1 つの指標になるのだ。金融機関では実際にこうした指標を使って信用を評価しているそうだ。

計算から得られる数値の的中率は、今のところ5~6 割。精度を高めるには、データの組み合わせ方を変える、より複雑な計算式を適用するといったことが必要だ。「とはいえ、どんなに精度が上がっても、得られた数値を最終的にどう判断し、リスクをどう評価するかは自分自身で決めることが大切です」と安藤先生は強調する。

このように、安藤先生が研究しているのは株式投資に伴うリスクや貸し倒れといった金融分野のリスクだ。学科では、金融のほか、情報・生産・生活という4 分野で生じうるリスクを中心に、それを発見し、大きさや影響を評価し、低減させる対策の立案までを学ぶことができる。

数学や統計学をベースにデータを分析

 

信用リスクの研究と並行して取り組んでいるのが、ビッグデータの分析だ。例えば、企業がもつ購買データを、多様な統計手法を用いて分析すると、顧客の買い方の傾向が見えてきて、売上アップや製品開発などにつながるという。「最近は、多くのビジネスチャンスを秘めたビッグデータを活用する動きが加速しており、解析ができる人材が求められています」。解析ソフトやAI(人工知能)も活用するため、情報処理技術も身につく。

いずれの研究も、ベースになるのは数学や統計学の知識だ。「そう言うと理系だと思われがちなのですが、実はこの学科は文理融合。数学は入学後に基礎から学ぶので、文系志望者でも大丈夫です。興味がある人は、ぜひ来てほしいですね」

【取材を終えて】中澤 彩恵さん(埼玉県・浦和ルーテル学院高等学校・2年)

 
 リスクを防ぐためにはそれから目をそらさず、きちんと向き合って評価し対応することが大切だと学びました。信用やリスクなど、目に見えないものを数値化して評価する安藤先生の研究は、私たちの生活を支えてくれている身近なものだという気づきも。こうした研究のおかげで私たちの生活が便利になっていることを知り、とても感謝したいと安藤先生のお話を伺って思いました。

 ↓↓↓取材動画はコチラから↓↓↓