今、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、不要な小型家電から金、銀、銅 を回収し、メダルをつくるプロジェクトが進んでいます。そこで、電子機器類から貴金属やレアメタル(希少金属)を回収する新たなプロセスを研究している、千葉工業大学工学部先端材料工学科の小山和也教授にお話を伺いました。

電子部品をリサイクル

携帯電話やパソコン、ゲーム機器など、私たちが日常的に使う電子機器類には、金や白金、パラジウムといった多様な貴金属やレアメタルが使われている。資源の乏しい日本は、これらのほぼすべてを海外から輸入しているが、価格高騰や政治的要因から、今後輸入が難しくなる可能性もある。そこで今注目されているのが「都市鉱山」だ。廃棄された電子機器類をこう呼び、積極的にリサイクルしようという動きが広がっている。

「1トンの天然鉱石からとれる金の量は、多くても数十グラム程度なんです」と話す小山先生。「それに対して、プリント基板などの電子部品には、1トンあたり約300~400グラムも含まれています。なかには、純度99%以上の金でめっきされている基板の接合部もあります。これを再利用しない手はないですよね。そこでこの研究室では、水溶液を使って、電子機器類から貴金属やレアメタルを効率的に回収する新たなプロセスを研究しています」

 

水溶液でレアメタルを回収

 

研究内容を具体的にイメージできるようにと、福元さんはデモ実験に参加させてもらうことになった。まず、濁った溶液に別の溶液を加えて混ぜる。すると溶液の色が透明になり、黒い沈殿物ができた。それを集め、加熱すること数分。沈殿物が固体化し、金色の金属に変わった。純度99%以上の金だという。「これは析出という方法で、金を溶かした王水(硝酸と塩酸の水溶液)にビタミンCを加えると、金の固体が得られます。このように水溶液を使って金属を溶かし、分離・析出したり、電気分解などを行ったりして回収していきます」

ただし、実際に基板から貴金属やレアメタルだけを取り出すのは容易ではない。「小さな基板でも、20~30種類の元素が混ざっているからです。しかも、どんな電子機器から集めたかによって混ざっている元素も 違うため、それぞれに合った回収プロセスを考えねばなりません。そこが研究の難しいところです」

まず、基板の中にどんな元素がどれほど入っているか調べ、その上で付加価値の高いものに絞って回収するものを決める。次に、どのように取り出すかを考えていく。「何を溶かして何を溶かさないか。この金属を溶かすにはどの溶液が最適か。さらに溶液の温度や濃度など、細かい条件を考え実験を行います」

新たな研究分野だけに、思い通りにいかないことも多いが、その分研究が進展した時の喜びは大きいと語る小山先生。「科学技術の進歩とともに、新たな材料は今後ますます増えていきます。だからこそ、それに適した回収プロセスを研究することが必要。持続可能な社会の実現に貢献できることも、この研究の大きな魅力です」

小山先生と研究室の皆さん

【取材を終えて】福元まりあさん(埼玉県・浦和ルーテル学院高等学校・3年)

 
  採取する際の金属含有量を比べたときに、鉱石よりも身近な家電製品の方が多いという話にまず驚きました。また都市鉱山という観点から見ると、日本は世界有数の資源大国。東京オリンピックに向けて、使用済み小型家電に含まれる金属からメダルを製作するプロジェクトも行われています。私も早速、家にしまってある携帯電話を回収ボックスに入れようと思いました。

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