技術革新がめざましい世の中において、「理系」の人材へのニーズは高い。近年は、学生がより幅広い分野のことを学べるように、大学の在り方を見直す動きもある。ここでは、理系の学部の特徴などを紹介しよう。
理、工、農、医療・保健のさまざまな専門分野が
理系の学部は、理学、工学、農学、医療・保健学の4つの系統に大きく分けることができる。
理学は、自然界の謎を解き明かし、根本的な原理や法則などを探究する学問。理学部には数学、物理、化学、生物などを学ぶ学科があり、高校で学んだことを発展させ、より高度で専門的な研究を行う。
工学部では、理学の知識をもとに、ものづくりや技術開発などに取り組む。日本の先進的な技術を学ぶため、海外からやってくる学生も増えつつあり、昨年5月の時点では3万人を超える留学生が工学系の教育機関で学んでいる。また、理学部と工学部の学科を併せて「理工学部」として設置している大学もある。
農学部では農業分野全般のほか、食糧問題やエネルギー問題、環境問題など、人類の生存にかかわることを広く学ぶ。近年では、バイオテクノロジーを応用する分野も注目を集めている。
医療・保健学の系統では、医師、看護師、薬剤師をはじめ、さまざまな医療福祉関係の専門職の育成などが行われている。座学のほか、資格取得に必要な実習の授業も多いのが特徴だ。
学部・大学院で6年一貫制の動きも
AIやビッグデータをはじめ、近年の科学技術やITの進歩はめざましい。しかし同時に、地球温暖化や人口の爆発的な増加、再生可能エネルギーの開発など、解決すべき課題も多い。このような状況の中、理系人材の育成には、国も積極的に取り組んでいる。文部科学省が昨年発表した「大学における工学系教育の在り方について」の中間まとめでは、「学士・修士の6年一貫制など教育年限の柔軟化」などが施策として挙げられた。これに先立ち、東京工業大学では平成28年度より学部と大学院の区分けを廃止して「学院」に一本化している。
この背景には、理系学部の大学院への進学率が約4割に上ることがある。昨今はより高度な知識や技術を持った人材へのニーズが高まり、大学院の修士課程修了を採用の条件とする企業も珍しくない。
理系学部では4年次ごろから研究室に所属することが多いが、修士課程まで進めば研究室に約3年間所属することとなり、より専門性の高い研究が可能になる。時には夜遅くまで実験に取り組んでデータをまとめ、英語の論文を読んだり、国内外の学会で発表したりと、多くの学生が忙しいながらも充実した日々を送っている。なお、学部・修士課程のいずれでも女子学生の割合は増加傾向にあり、「リケジョ」は現在も広く活躍中だ。
学科の枠にとらわれず幅広く学ぶことも可能に
教育の質の向上のため、各大学でも学部や学科の在り方を見直す動きが見られる。平成29年度より7学科を1学科に統合した新潟大学の工学部に続き、平成31年度には愛媛大学の理学部・工学部、佐賀大学の理工学部が学科の統合を予定。私立大学でも理学・工学系の学部を再編する動きがあり、学科の枠にとらわれずにさまざまな分野を学べる学部が増えつつある。
また、AIやIoTの発展に伴い、広島大学では情報科学部、横浜市立大学ではデータサイエンス学部が創設されるなど、より専門性を高めた学部を増やす動きもある。今後は修士課程も含めた6年間での学びも視野に入れ、複数の領域を学びながら幅広い知識・技術を身につけるチャンスが広がっていきそうだ。