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2017年度 審査員特別賞

土田向夏花さん(北海道札幌国際情報高等学校 2年)

Q エッセイコンテストに応募されたのはなぜですか? きっかけや経緯を教えてください。

HIECCという団体のラオスの研修に応募し、そこで経験してきたことをJICAのエッセイとして提出するということが決まっていたから。内容は別のことを書こうと思っていたのですが、北朝鮮からのミサイル発射をうけて、このことを書きたい!と強く思ったから。

Q エッセイで一番表現したかったのはどんなことですか?

野田さん(ラオスで実際に活動されている方)が言った「平和への恩返し」が含んでいる思いや、そこで自分が変わったこと。

Q エッセイ執筆の過程で苦労したことや、工夫したことがあれば教えてください。

最初、書いていると、できごとをならべたような感じになってしまって、一本にまとめるのに苦労しました。自分の思いを伝える、言葉にできるよう何度も書き直して、一緒にラオスに行った先生や友達にも見てもらって、納得いくまであきらめずに書き続けました。

Q 執筆してよかったと思うことがあれば、教えてください。

ラオスに行って終わりではなくて、何度も何度も思いをはせて研修に行った本当の価値を感じられたこと。他の様々な思いをもっている中高生のエッセイを知ることができ、また自分が変われること。

Q 次回のコンテストの応募を考えている生徒に向けて、テーマの決め方や、文章の書き方のアドバイスをお願いします。

自分が本当に心に感じたことを是非テーマにして、周りの家族や先生方等と一緒に何度も考えてみて下さい!必ず自分の思いが言葉にできて、自分までうれしくなると思います!何を一番伝えたくて、そうなった原因、そうさせたものは何かを考えてみて下さい!

Q あなたのこれからの目標や夢があれば教えてください。国際協力に何らかの形でかかわりたいと思っているようでしたら、そのかかわり方も教えてください。

子どもたちを笑顔にしたいとい思いがあって、国際協力にももちろん興味はあるのですが、その方法はまだ考えている途中です!それについても今回ラオスに行くことで、見いだしていきたいです。

 

 

審査員特別賞

自分事として考える

北海道札幌国際情報高等学校2年 土田 向夏花

 

「ミサイルが発射されました。直ちに避難してください。」しばらく続く緊急警報に、私は怖くてたまらなかった。家族と離れ離れになるのでは。不安な思いが頭をよぎる。だがその反面、私のところには落ちないだろうと思う自分もいる。その時、私はラオスで出会った野田さんのことを思い出した。

私はこの夏ラオスへ行き、首都ビエンチャンにある不発弾の処理を行う日本の団体を訪れた。そして、実際に活動されている野田さんのお話を聞く機会があった。以前は、自衛隊で爆弾を扱う仕事をしていたそうで、展示してある不発弾のことを教えてくれた。中に火薬が入っているもの、踏むと黄燐が飛んで皮膚を爛れさせるもの。「すべて人を殺すのが目的ではなくて、傷つけるためのものなんだよ。」その言葉に胸が締めつけられる思いだった。どうしてこの仕事をしようと思ったのだろう。そう思い尋ねると、「これまで平和な暮らしをしてきたから、その恩返しがしたい。」と答えてくださった。野田さんが言った。“平和”“恩返ししたい”ってなんだろう。日本に帰ってからもこの言葉が私の心に残って、その意味を考えていた。

私は、日本には戦争がなく、学校に行くのも、ご飯を食べるのも普通にできているから平和だとラオスに行く前は漠然と思っていただが、恩返ししたいと思う平和は、野田さんが出会った人とのつながりの中で感じたものなのではないか。では、自分はどうなのだろう。考えてくと、私は自分を大切にしてくれる人たちに囲まれて、生きていることに気がついた。私も恩返ししたい。次第にそう思う様になり、野田さんの思う平和が何か分かったような気がした。それで満足だった。

そんな時起こったミサイル発射。家族と別の部屋に移動して、警報が止むのを待ったけれど、なかなか消えてはくれない。こんなに警報が続くことは今まであっただろうか。そう思うと、自分の中で恐怖が増していくのが分かった。同じ場所にいるはずの家族が離れていくようだった。そして、私はようやく気づかされた。ラオスの方が感じる苦しさや恐怖を全く自分事として考えていなかったことに。ラオスに行った時でさえも、戦争の怖さを知ったつもりなだけ、他人事だった。またあの時の私には、恐怖を感じても学校のことや家を出る時間のこと等自分の都合を考える余裕があった。きっとまた脅しているだけだろうと、心のどこかで思っていたからかもしれない。でも、ラオスの人々はどうだろうか。どこへ行っても、残っている不発弾。家族や友人が苦しむ姿を見ると、自分が感じた以上の恐怖を感じているのではないか。

自分が想像していた以上に戦争が人の心に影響するのが分かった。野田さんが自分の命を危険にさらしてでも、ラオスの不発弾に向き合っているのは、感謝の気持ちからだけではなくて、自衛隊での経験を通してラオスの方が感じ続けている終わらない戦争の恐怖を知っているからかもしれない。また野田さんが、不発弾を取り除いた後に、学校を作るのがやりがいと言っていたことを思い出した。戦争の怖さを知っているからこそ、子どもたちを笑顔にしたい。その思いが野田さんの本当の原動力になっているのではないだろうか。

不発弾でラオスの方々は恐怖を感じている、私はそのことに無関心ではいたくない。では、自分には何ができるのだろう。私は将来の夢について今も悩んでいて、すぐに答えは出ないかもしれない。けれど、一つ確かなのは、ラオスで出会った子どもたちのキラキラした笑顔が忘れられないこと。だからどんな方法であっても、野田さんの様に、子どもたちの気持ちに目を向け、自分事として考えていきたい。そして、あのとびきりの笑顔を見るために、子どもたちの役に立ちたい。

 

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