今回お話を伺ったのは、プラズマの特性を研究している千葉工業大学工学部電気電子工学科の小田昭紀教授。プラズマは私たちの暮らしに密接に関わっているそうですが、そもそもプラズマとは何なのでしょうか?

小田教授と研究室学生

 

暮らしの多様な場面で活用されるプラズマ

「プラズマは電気が流れる気体で、固体、液体、気体の次の『物質の第4 番目の状態』と位置付けられています。例えば氷は固体ですが、温めると水という液体になる。それを温めると水蒸気という気体になり、それをさらに温めると、気体に電気を帯びた粒子が交じるプラズマになるんです」と説明する小田教授。でも、福元さんは困惑気味だ。「そのプラズマが、私たちにどう関わっているのでしょうか。正直なところ、イメージがわかなくて…」

「実は、プラズマは私たちの身近にたくさんあるんです。雷やオーロラは自然界のプラズマですし、人工的に作られたプラズマは暮らしの多様な場面で利用されています。その一つが蛍光灯。プラズマは真空状態にした容器に気体を入れ、高い電圧をかけると発生するのですが、その時光が生じます。それを照明として使っているんです」

また、電子機器に不可欠な半導体の製造に用いられているほか、飲料のペットボトルにもプラズマが利用されている。プラズマを使って内側に薄膜をコーティングすると、内容物が劣化しにくいのだ。「プラズマには優れた機能がたくさんあるんですね」と驚く福元さん。「最近は、プラズマを照射して農産物の成長を促進させる、正常な細胞を傷つけずがん細胞だけを死滅させるといった研究も進んでいて、応用分野が広がっています」

 

シミュレーションでプラズマ内部を可視化

原理上はどんな気体もプラズマ化できるが、気体の種類が違えばプラズマのもつ機能も違ってくる。そこで、いろいろな気体をプラズマ化し、特性を調べ、どんなルールのもとでどう利用すれば暮らしに役立つのかを考えるのが、小田教授の研究だ。

プラズマの特性を調べるため、研究室では実際にプラズマを作る実験研究と、計算機によるシミュレーション研究を並行して行っている。「気体によってはプラズマ現象が一瞬で終わってしまう場合もあるので、実験だけでは解明できないことが出てくるんです。そこで、コンピュータ上でプラズマを仮想的に再現し、数値計算を行って、プラズマ内部にどんな粒子がどれほどの密度で存在しているのかなどを『見える化』しています」

シミュレーションを用いることで、気体の材料や特性をどう変えると、プラズマ中の粒子の動きや分布がどう変化するかが具体的にわかるそうだ。「こうした研究が、効率的なプラズマの活用法や、新たな機能をもったプラズマの開発につながるのです。プラズマの特性を正しく理解して、私たちの暮らしをより快適にしていきたいですね」

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【取材を終えて】福元まりあさん(埼玉県・浦和ルーテル学院高等学校・3年)
 
 

今回、プラズマを発生させる装置を見学したり実際にプラズマに触れたりして、プラズマ技術に対する難しくて複雑だというイメージが、「面白くて便利!」に変わりました。日常生活のどこにプラズマが利用されているのか探してみるのも楽しみです! プラズマは消臭・除菌だけでなく、美容にもレーザーと同じような目的で応用できるそうなので、女子としてはそうした部分にも魅力を感じました。