焼酎の搾りかすから作る充電池 将来は電気自動車に応用へ
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工業大学での学びを知ってもらおうと、福岡工業大学工学部の田島研究室を訪ねた。この研究室では、焼酎の搾りかすを使って、充電池を作る研究を行っている。田島大輔准教授に研究のきっかけとその内容を聞いた。

田島大輔准教授

「以前、宮崎大学の農学部にいたときに、農林畜産廃棄物の研究に携わったのがもともとの始まりです。そのときは、コーヒーかすから蓄電池を作っていました。コーヒーかすは良い性能が出たのですが、回収コストがかかることと回収量が少ないのがネックでした。そこで、地元でたくさん出てなおかつ地域貢献にもなる原料ということで目を付けたのが『焼酎かす』です。焼酎かすはひとつの焼酎メーカーあたり、年間1000tにもなることがあります。しかも、地域によっては回収システムが確立されているところがあるのです。これを利用しない手はないと思いました。」

田島准教授の開発している充電池は、「電気二重層キャパシタ」と呼ばれるコンデンサの一種。これは、活性炭でできた電極を電解液の中に入れ、セパレータで区切ったもので、活性炭の表面にあるでこぼこにプラスとマイナスのイオンがくっついたり離れたりすることで、電気をためたり流したりする。

この電池は化学反応を伴わないため、劣化しにくく、鉛電池のような化学電池と違って、交換が要らないので半永久的に使うことができる。こうした電池を「物理電池」という。田島准教授は、直径1cmの小さい電極から始め、5cm×5cmの角型電極を経て、現在ではA4サイズの電極まで大型化することに成功した。これにより、直流で24Vの電圧を得ることができる。この電極は、薄いセルを24枚重ねて圧力をかけることで実現した。また、この電極を12枚使って、クリスマスツリーに使うLEDを点灯させることに成功。この装置では、30分の充電で、約1ヵ月間LEDを点灯させることができる。装置を作ったのは、修士1年の平野雅貴さん。今年の冬には、キャンパスを彩るイルミネーションを点灯させる計画もあがっている。

A4サイズまで進化した廃棄ゆずを使用した物理電池
クリスマスツリーに使うLED

究極のエコカーが誕生!? 研究を応用してさらなる広がりを

電気二重層キャパシタで大きな電流を得るには、活性炭の表面積を大きくすることが重要だ。焼酎の搾りかすを酸素がない条件で焼く「炭化」という操作を経て活性炭を作ると、表面にはマイクロメートル単位の孔ができる。田島研究室では、さらに窒素ガスを使って高温で焼く「賦活(ふかつ)」という操作を経て、活性炭の表面にナノメートル単位の孔を作り出すことに成功。孔が細かいと、より多くのイオンをためることができる。

こうした研究の成果を活かして、現在は、電気自動車を動かす蓄電池を作る研究を進めている。さらに将来は、電気自動車のモーターの研究をしている同大学同学部の大山研究室と共同で、電気自動車そのものを作る研究を行っていく予定だ。順調にいけば、来年あたりには、電気自動車の実走実験ができるかもしれない。電気自動車に太陽電池を搭載することで、ガソリンも水素もいらない「究極のエコカー」が実現できるのもすぐそこかもしれない。

高校生へのメッセージ
 田島准教授は九州でただ一人の第一種電気主任技術者の資格を持つ大学教員だ。田島研究室では、資格取得にも力を入れており、毎年夏休みに集中して試験対策を行うほか、週一でセミナーも実施している。そのおかげもあり、一昨年、昨年と2年連続して、研究室から電気主任技術者の合格者が出ている。卒業後は修士課程に進む学生のほか、電気設備施工会社やプラントメーカーなどに就職実績がある。「これから電気自動車や家庭用蓄電池の研究に力を入れていくので、そうした研究に興味のある学生に全国から来てもらえたら嬉しい」とメッセージを送る。

【研究室データ】
田島大輔准教授と研究室のメンバー

学部4年:9名
修士1年:2名(うち1名は留学のため休学中)
修士2年:2名
留学生:1名(マレーシアのペトロナス工科大から)

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