城処麻美さん(27歳)は、2013年3月に星薬科大学を卒業後、岩城製薬株式会社に入社。現在は、製剤研究部に勤務し、薬剤師資格を活かし、医薬品の開発・研究を行っている。入社3年目の城処さんに、やりがい等を聞いた。

──薬剤師になろうと思ったきっかけは?

 小1の頃から花粉症がひどく、病院に通っていましたが、当時はあまりいい薬がなくてとても苦しかったんです。その頃から、「大きくなったら花粉症に効く薬を作る人になる!」と決めていました。

 また、栄養士の資格を持っている母が、「これから女性が働いていくためにも資格を持っている方がいい」とアドバイスしてくれたのも大きかったかもしれません。

──ずっと夢を追い続けたんですね。

 薬剤師を目指してきちんと勉強を始めたのは、高2の終わりくらいからです。自宅から通えることを理由に、薬学部のある私立大学を志望校に決めたので、勉強も数学・化学・英語の3教科に絞れました。

 受験勉強は決して楽ではなかったけれど、高3のクラスでは医療系の進路先を目指す仲間が多かったので、私もがんばれました。

 私大薬学部の入学試験は、難易度の高い問題というより、基礎的なことをどれだけ正確に知っているかを問われます。基礎固めに徹するため、何回も同じ問題集を繰り返し取り組み、入試に臨みました。

──大学に入学してからの勉強はどうでしたか?

 正直大変でした。特に、物理の授業や薬学に関する専門的な講義等とても難しかったです。朝からびっしり講義があり、2年生からは実習や実験もありましたから、6年間かなり忙しい毎日です。

 4年生になると研究室にも所属しました。私は3年生までの勉強で、患者さんが飲みやすい薬とはどういうものかに興味を持っていたので、薬の剤形について考える研究室に入りました。

 5年生では、病院と薬局に約3か月間ずつ実習に行きました。実習先にズラリと並ぶひとつひとつの薬を見ながら、患者さんにとって飲みやすい薬だろうかと考えている自分に気づき、私はやはり薬を作る薬剤師になりたいんだ、と再認識しました。

──薬剤師の国家試験はどうでしたか?

 私が通った星薬科大学では、6年次に「総合薬学演習Ⅱ」という授業があり、国家試験を視野に入れ、6年間の総復習を行います。自分の苦手分野を見直したり、先生に相談したりしながら、本番に向けて準備を進められたのは、心強かったですね。

 ただ、どんなに勉強しても、プレッシャーはありました。国家試験に初めてチャレンジできるのは6年生の3月。すでに就職先も卒業も決まっている時期です。もし国家試験に不合格でも、私の場合は内定が取り消されるという心配はありませんでしたが、国家試験に向けての勉強はかなり大変なことだと実感していたので、仕事をしながら試験勉強はしたくないな、と思っていました。私だけでなく同級生はみんな、ドキドキしながら試験に臨んだと思います。

──現在は、どんなお仕事をされていますか?

 私が所属しているのは、ジェネリック医薬品を開発する部署です。すでに特許期間が過ぎた先発品を、後発品としてどのように製造するかを薬剤師の視点から考えていく仕事です。試薬を作り、評価することをチームで積み重ね、ジェネリック医薬品として発売できるまで研究を続けています。

──お仕事はどうですか?

 就職して1〜2年の頃は分析用の機器の操作などに戸惑い大変なことも多かったけれど、今は後輩もできて、当初よりは余裕が出てきたかもしれません。担当している薬が発売日間近になると残業や休日出勤もあり、決して楽な仕事ではありませんが、幼い頃から夢だった「薬を作る」という自分のやりたい仕事ができているので良かったと思っています。

──これからの夢はありますか?

 開発のスタートから関わっている薬を世に送り出すことです。一種類のジェネリック医薬品が世に出るまでには、およそ5年はかかります。入社して3年目の私にはまだ経験がないので、その瞬間にぜひ立ち会ってみたいです。

──薬剤師を目指す高校生にアドバイスをお願いします。

 薬剤師というと、調剤薬局やドラッグストア、病院などで働くイメージが強いかもしれませんが、職業の幅は実はもっと広いんです。医薬品だけでなく化粧品の開発部門、医薬品製造の工場管理等、薬剤師の知識が求められている職業がたくさんあることを、ぜひ知って欲しいですね。