緑川浩司理事長

小規模大学ならではの「寺子屋方式」で就職内定率100%を達成するなど、震災以来存在感を増す東日本国際大学。創立50年を迎えるいわき短期大学を母体に1995年に誕生した。「行義以達其道」(他人を思いやり、心を施すことで自らの道を拓く)という儒学の教えをもとに、「人間力」を重視した教育を行っている。緑川浩司理事長に話を聞いた。

 

 東日本国際大学の学生ホールに入ると、鮮やかなブルーとイエローが目に飛び込んでくる。ペイントされた壁の正面に刻まれているのは「IMAKOSO HONKIDE SUKURAMU YUUKINOZENSHIN 2011.
3.11(今こそ、本気でスクラム!勇気の前進!)」というメッセージだ。

「震災後、在学生・新入生がはじめて大学に会したのは5月の連休明け。集まった学生たちを驚かせたいと、無理を押してここだけ改修しました。少しでも明るい気持ちになってほしいと考えたのです」と緑川理事長は振り返る。
 震災直後は教職員がインターネットを介して学生とつながり、一人ひとりの状況に応じた手厚い支援を提供した。「仮設住宅ができるまで、学生だけでなく、その家族も学生寮に受け入れました。混乱のなか、教職員は建学の精神を規範に『人のため』『学生のため』に行動したのです」

こうした温かさと、教職員と学生の距離の近さが東日本国際大学の強みだ。
 「とくに震災後は一人ひとりに寄り添い、ときには背中を押すようにして学生を励まし続けました」と緑川理事長。次第に目の輝きを取り戻した学生たちは、以前にも増して勉学に真剣に取り組むようになったという。

「平成の寺子屋」といわれる面倒見のよさとは

ここ数年、東日本国際大学の就職内定率は100%で、4人に1人が一部上場企業・公務員に内定。社会福祉士国家試験の合格率も38%と、全国平均を実に10ポイント上回っている。
 「企業の人事担当者によくいわれるのが、本学の学生は面接での態度・受け答えが素晴らしいということ。高倍率のなか、ひとつしかない採用枠を勝ち取る学生が毎年数多くいます」と緑川理事長はいう。

最近ではある学生が100倍以上の難関を突破して福島放送に就職。また、高校時代は保健室登校だった学生が、大学で社会福祉士と精神保健福祉士のW資格を取得し、首都圏の市役所職員として採用された。
 ではなぜ、東日本国際大学ではこれほどの力が身につくのか。答えは「平成の寺子屋」といわれる面倒見のよさにある。

「1年次からスタートするゼミナールは、学生が10人以下の少人数教育。大学に来ない学生の様子を担当教授がアパートに見に行くほど家族的な雰囲気があります。就職の際には担当教授とキャリアセンターが連携し、徹底的に学生の面倒を見るのです」
 さらに大学に集まる情報量と人脈の多さも就職内定率につながっている。

「卒業後は県内に限らず、自分の地元で就職を希望する学生が多い。教職員はコネクション作りのため全国を奔走しています」と緑川理事長は話す。
 「本学の教職員は『うちの大学を選んでくれてありがとう』という真心から、学生をとても大事に育てる。そこが有名マンモス大学とは違うところなのです」

吉村作治副学長らによるeラーニング講座を開設

今年、東日本国際大学にエジプト考古学者として知られる吉村作治氏が副学長に就任し、来年4月からは脳科学者の中野信子氏を特任教授に迎え、インターネットラーニングをスタートする。簿記や販売士、秘書検定などの資格取得をめざす講座も開講予定だ。
 緑川理事長は「よりよい人生を歩むための人間力を育てることが本学の使命。そのためのサポートは惜しみません。夢を実現したいみなさんの入学を期待しています」と呼びかける。