「機械好き」という個性を、大海原の職場で生かす。

船は地球環境にやさしい輸送機関。今後ますます注目を浴びるはずだ。そんな海上輸送に携わる船員になるのに必要な海技資格が取れる学校を紹介しよう。

機械が好きで、海が好き。そんな人には、航海士や機関士になる道がある。静岡市にある国立清水海上技術短期大学校は、船を安全に航海させる「航海士」と、エンジンの運転や整備をする「機関士」の両方を養成する学校。座学と実習を終え、卒業後に口述試験と身体検査に合格すれば、わずか2年間で四級海技士(航海)と内燃機関四級海技士(機関)という2つの免状が取得できる。口述試験は通い慣れた学校が試験会場なのでリラックスして受けられる上、筆記試験と免許講習が免除されるなどメリットがたくさん。早く資格を取って活躍したいという人にはぴったりだ。

同校は文部科学省ではなく国土交通省が管轄する船舶職員養成施設。1年目は船の安全な運航の基本を学ぶ。主な科目として、航海、海事法規、海洋気象、電気電子工学、船用機関などがある。 実技には、ロープを編んだり結んだりする「ロープワーク」、電気回路を組み立てる「シーケンス」、さらには「溶接」「調理実習」「防火訓練」などもあり、自分が着実に成長していくのを実感できる。もちろん、「海上実習」もあり、校内練習船「かざはや」や小型船舶、端艇(カッター)に乗り、安全で効率的に運航する力を養う。

2年目は、合計9カ月間の「練習船航海実習」。約3カ月単位で3タイプの船舶に乗り込み、国内のさまざまな港をめぐりながらチームワークの大切さを実感する。

2年間という短期間で多くのことを学ぶため、勉強づけの日々になるように思うかもしれないが、スポーツ大会やバーベキューなどのイベントがあるほか、クラブ活動も楽しめる。仲間との思い出がいっぱい作れそうだ。

短期間でたくさんのことを覚えるのは大変だが、中身の濃い時間でもある。しかも、在学中に「一級小型船舶操縦士」「第一級海上特殊無線技士」「ガス溶接技能講習修了証」の取得も可能だ。 また、三級以上の上級免状筆記試験に合格しておけば、就職後、船長や機関長になる夢にぐっと近づくことができる。

同校は国立の海事教育機関であるため授業料は安く、個室の全寮制なので学習環境もいい。また、技術と資格を身につけた卒業生は即戦力となるため、海運業界からの評価が高く、就職率も高い。 就職後もさまざまな手当てがあり、同年代の陸上勤務の人より高給だ。しかも、乗船中は生活費が一切かからない。

さらに、勤務体制は3カ月間乗船して1カ月間休むというサイクルが一般的なので、休暇もまとめて取れる。長い航海が無理なら、毎日家から通える勤務形態の職もある。

同校の遠藤先生は、「長期間、船で共同生活をすることになるので、協調性があり、団体行動ができる人であることが大切」とアドバイス。そして、「最初は船酔いに悩まされるでしょうが、慣れるので安心してください。機械好きな工業高校生は大歓迎です。」とつけ加えた。

 

船員の仕事・船の役割

 

船員とは、船に乗って働く人々のことをさす。

外国航路の船で働く船員を外航船員、国内の航路を行き来する船で働く船員を内航船員という。外航船員、内航船員ともに仕事の階級として大きく、職員と部員とに分けられる   ■職員

  • 法律で定められた国家試験に合格して海技資格(海技免状)を持って船に乗り込み船を動かす指揮をとる以下の人たち

①     船長…船の最高責任者。船の針路を決定したり、船員を管理・監督する任務を負う

②     機関長…船を動かすエンジンや、発電機などさまざまな機械、装置の運転管理を行う機関部の最高責任者

③     航海士…船が航海中は、4時間交代で見張りや操船、出入港作業の指揮監督を行い、港に入港すると荷物の積み下ろしの監督などの任務を行う。一等航海士(チーフオフィサー)、二等航海士(セカンドオフィサー)、三等航海士(サードオフィサー)の3つの階級がある。内航船では、三等航海士のいない船がほとんど

④     機関士…船が航海中は、4時間交代で機関室(エンジンルーム)の機械の運転を監視する。一等機関士(ファーストエンジニア)、二等機関士(セカンドエンジニア)、三等機関士(サードエンジニア)の3つの階級がある。現在では、夜中は機関室の監視をすることのない体制の船が多くなってきている。航海士と同様に、内航船では、三等機関士のいない船がほとんど

⑤通信士…陸上との無線連絡を担当する。しかし、現在では通信技術の進歩により船長や航海士などが兼任する船がほとんど

■部員

●職員を補助しいろいろな仕事を行う。(例)甲板部員、機関部員、事務部員など

〈船員の仕事〉

船では、船の最高責任者である船長のもとに、次のような部門が分担して仕事をしている。

①     甲板部…操船(船を操ること)から貨物の積みおろしなど

②     機関部…エンジンやボイラー、発電機などの運転や整備、燃料の補給など

③     無線部…陸上や他の船舶との通信など

④事務部…出入港手続き、船内での調理、客船などでの乗客へのサービスなど