データ処理の高速化はコンピュータだけでなく、世の中も快適にしてしまう

急速に発達するインターネット環境――。もはやコンピュータは「TVや新聞などの既存のメディアを超えた」と言い切る専門家もいるほどだ。先月、世界中を騒がせたロシアへの隕石落下のニュースでは、テレビがいち早くYouTubeに掲載された映像を活用するなど、既存のメディアをリードした形となった。

「今後、ネットはもちろんコンピュータの重要性はますます高くなると思います。この時に必要となるのが、大量に生成される大規模なデータをいかに高速かつ効率的に処理できるか… …。私の専門=『大規模データ解析・分散処理』は、言葉は少々難しいですが、このための実行方法を中心に研究する分野なのです」

秋岡明香准教授はこう説明する。

例えば、垂直離着陸輸送機オスプレイの沖縄米軍基地への配備問題。当初、新聞やテレビは沖縄に負担をかけることの是非について論じていた。「しかしネットユーザーは世界中のさまざまな文献を調べ、同機の安全性について『こういう姿勢をとったときに危ない』など冷静に分析。普天間基地が市街地にあることにも絡めながら『国防上必要と思うが、安全性を考えると普天間に配備して本当に大丈夫だろうか?』――という論調を打ち出し、次第にマスコミや世論をリードし始めました」と秋岡准教授。Facebookもそうだが特にツイッターは、ユーザーに若い人が多いこともあって「彼らの論調は、次の時代の世論を読み解く“カギ”にもなると思います」とその重要性について強調する。

では、どうしてデータ処理速度を上げることが必要なのだろうか?

「そこには二つの意味があります。一つは処理の“質”の向上です」。秋岡准教授によると処理には「ここまでに終わらせる」という“デッドライン”がある。処理速度が遅いと、当然限られた方法で限られたデータ量しか解析できない。しかし速度が速いと「もっと詳細で緻密な解析方法が使えるかも知れないし、もしかしたらもっと大きなデータが扱えるかも知れない……。つまり結果的に内容を広く深く解析することができるのです」 もう一つが消費電力を抑えることだ。「スーパーコンピュータを何も考えずに設計すると、専用発電所の設置が欠かせないほど大量の電力が必要です。プログラムの実行速度を上げることは、電力消費の時間を削減できる――。つまり消費電力を抑制することができるのです。速度を上げるということは、単に100㍍走で一番になるのとは違って、さまざまな付加価値がついてくるのです」。これら二つの理由でデータ処理速度の高速化は絶対に欠かせないという。

「私の研究分野は、ゲームアプリの開発などとは違って、いっけん目立たないかも知れません。しかし、コンピュータ活用のいわば“肝”の部分で絶対に不可欠な分野なのです」と秋岡准教授。この分野を目指す高校生には「専門を追究すればするほど、さまざまな分野の幅広い知識が必要になってきます。受験勉強も大変でしょうが、理科系分野や英語はもちろん、古典文学や歴史・文化、政治経済など、あらゆる分野に興味の幅を広げておいてください。そこで培った広い視野は必ず役立ちます」とアドバイスする。