熱交換器の性能向上の研究で持続可能なエネルギー利用につなげる
家電に使われている熱交換器の形状をシミュレーションで改良
のどかな田園風景に囲まれた日本大学郡山キャンパス。環境試験装置の設置されたテラスと、廊下をはさんだ向かい側にある機械工学科の研究室で、佐々木直栄教授に研究室のテーマを聞いてみた。
「持続可能なエネルギー利用に関する研究です。資源の枯渇が問題となっていますが、特に東日本大震災以降、エネルギーの消費量を減らすことが求められています。そのため、エコキュートやエアコンなどのヒートポンプに内蔵されている熱交換器の性能を上げる研究を行っています。そのエネルギー効率を上げるためには、熱交換器の形状とその中を流れる媒体の性能の両方を最適化することが重要になってきます。」
そこで、研究室の学生たちは、パソコン上でのシミュレーションで日々、検討を繰り返してデータ収集を行っている。地道な作業だが、「実際の熱交換器を試作するのはとても費用がかかるので、まず簡略化した形状モデルを使ってシミュレーションしていきます。1つのシミュレーションに1週間かかることもあります。でも、エコキュートやエアコンなどのヒートポンプに限らずパソコンのディスプレイやスマートフォンなど、熱を発生する製品には熱交換器は必要不可欠、最適化された形状を実現し、エネルギー効率を上げることができれば、自分が作った熱交換器が市販家電に組み込まれることも夢ではありません」と佐々木教授。
学生時代に企業レベルの技術と厳しさを教えるのがモットー
「別の切り口で、エアコンのフィールド実験も行っています」
それが冒頭で紹介したテラスの環境試験装置だ。「市販のエアコンは、全国どこの気候にも合うように作られています。その地域の実情に合わせていないということは、ムダが多いということ。そのムダを省けば、もっとコンパクトな省エネ製品が作れるかもしれません。
工学部では、心と身体、地球にやさしい生き方を意味する“ロハス”をキーワードにした教育を行っていますが、その実践ですね」
そう話す佐々木教授は、企業出身。学生への指導は厳しいと自認する。「企業で使うシミュレーションツールを導入することで、企業レベルの技術と厳しさを教えるのがモットー。でも、厳しいというと高校生が来てくれないかな?」と笑う佐々木教授。その厳しさには愛情が見え隠れする。