決力を培う「プロジェクトゼミ」とは

多摩大学では、学術的研究の“ホームゼミ”に加え、さらに参加できるゼミがあります。学問体系に縛られることなく、現実にある問題に取り組み、解決策を考えていく“プロジェクトゼミ”です。

その1つ、サンリオピューロランドと産学連携している松本祐一准教授のゼミを例にとって“プロ ジェクトゼミ”とはどのようなものか、その内容についてご紹介します。

ハローキティなどキャラクターグッズで有名なサンリオ。そのレジャー施設である多摩大学と同じく多摩市内にあるサンリオピューロランドが抱える課題は、子ども向けレジャー施設のイメージが強く、実は高校生や大学生といった“若い世代”の来場者が少ないこと。一方、多摩市は多くの大学がありますが、学生はあまり地元のことを知らなかったり、関心が薄かったりするという課題を抱えていました。そこでお互いの課題を解決すべく、松本ゼミとサンリオピューロランドによる産学連携プロジェクトがスタートすることになったのです。

このプロジェクトは2011年6月から本格的に始動し、ゼミ生たちは、まず現状を正確に把握するため、地元の高校生・大学生を対象とした約600名のアンケートやインタビューによる調査することに。膨大な量の情報をエクセルやパワーポイントに入力しながらデータ化しまとめていきました。その調査結果をもとに問題点を整理して、サンリオピューロランドの担当者もゼミに参加してもらい、どのような方法でターゲットとなる“若い世代”の認知と集客に結び付けるか、何度も意見交換を重ねていきました。ときには、教室内が企業の打ち合わせの場のようにはりつめた空気が漂うこともあったそうです。

そうした企画会議を経て、ようやく「新しいイメージ×繋がり」をコンセプトとするサンリオピューロランドを使ったイベントを年末に実施する計画にまとまりました。

この計画に決まってからは、ゼミ生たちは、それぞれ班ごとに分担し、取り組んでいきました。企画班は、2部構成のクリスマスイベントを企画。第1部は、地元の商店街でプレゼントを購入し、第2部で、サンリオピューロランドで、プレゼント交換やさまざまなゲームなどのプログラムで、何度もリハーサルを行いました。また広報班では、ブログやツイッター、フェイスブックなども積極的に活用。そして、8月には、オープンキャンパスに参加した高校生たちを対象にサンリオピューロランドでフィールドワークを行いました。さらに資金集めの協賛班は、学園祭で喫茶店を出店、地元の商店街に電話やFAXで連絡を取り、お店に直接足を運んで協賛の交渉と、それぞれの班が苦労しながらも準備を進めていったのです。

こうして約半年間かけて取り組んできたプロジェクトの集大成となる「SANTAMA CHRISTMAS PARTY」は、見事に成功。多摩市に関わる16企業からの協賛・協力と18大学から多数の学生を集客し利益を出すことができました。またイベント内容も好評で、来場者の90. 5%がイベントに「満足」との回答を得るイベントとなったのです。指導した松本先生も「あくまで主体は学生自身。失敗を乗り越えた彼らがこのイベントで大きな自信を得ていることは、その表情の変化からも読み取れます」と話し、彼らの成長に目を細めます。

プロジェクトゼミは、このほか20を超えるゼミがあり、それぞれ地域や企業が抱える具体的な問題をテーマとして取り上げ、学生たちが主体となり、実社会に触れながら自ら考え、行動する力が養っていきます。今回のように、自分たちで考えたことにはっきりと結果が出るのが、まさにこのプロジェクトゼミの醍醐味。イベント実施に至るまでのさまざまな課題を仲間と乗り越えた経験は、就職活動をはじめ、将来さまざまなシーンで活かされることでしょう。