林能成教授

[関西大学 社会安全学部 林 能成教授]

自然災害と事故のリスクに
立ち向かう

自然災害や事故、環境破壊、食の安全、感染症---私たちは日々、様々なリスクと隣り合わせだ。近年は犯罪や国際テロ、情報セキュリティの問題にも注目が集まっている。

こうした時代のニーズに応え安全・安心な社会の構築に寄与しようと、2010年、関西大学に「社会安全学部」が設立された。目指すのは、特定の専門分野の研究だけでなく、成果を社会に応用できる「社会貢献型」の人材育成。工学、理学、情報学、社会医学といった理系に加え、法学、経済学、経営学、心理学、社会学といった多様な学問を融合し、防災・減災対策や事故防止、危機管理のための政策立案とその実践ができる人材を育てている。

科学の成果を社会で
生かすために

「研究室でデータと向き合うだけでなく、科学の成果を応用して社会に生かすことが大切」。こう話すのは、地震学が専門の林能成教授だ。

高校時代に伊豆大島の三原山が噴火したのをきっかけに地震学・火山学に関心を持ったという林教授は、大学で学んだ地震学の知識を生かしてJR東海で新幹線の地震防災対策などの業務に携わった。

その後も大学院で地震の研究を続け、地震発生のメカニズムなど自然現象の科学的な解明に取り組んできた。そうした中、「防災・減災対策を進めるためには、専門知識の“活用”が不可欠」と気がついた。以来、人々の防災意識を高めるために、行政や教育など多角的な視点を持って社会に伝えていくアプローチに力を入れている。

林教授のもとで学ぶ学生たちは、地震学の基礎を習得するとともに、災害に強い構造物や街の防災政策づくりなど幅広い視点で物事を捉え、「地震学」を「防災地震学」に発展させるべく奮闘している。また、実際に被害地震があった地域で地震計を使って微弱な揺れを観測し、過去の災害の規模と地下の地盤構造との関連について実証するなど自主的な野外学習の機会も多い。

「地震学は理学部の地球惑星科学科で研究されていますが、その成果の活用に取り組む人は少ないのが実情。社会安全学部で諸分野と協力しながら新しい地震学を構築していきたい」と林教授は話す。

文理融合の幅広い視点で
社会問題を柔軟に解決

理系・文系両方の出身学生がともに学ぶ社会安全学部。「理系・文系と二者択一で自分の枠を狭めることなく、幅広い視点で物事を捉え、多様な知見を持つ人々と協力しながら、問題を解決していける柔軟な姿勢を身につけてほしい」と林教授は強調する。

卒業生の中には、公務員として地域の危機管理対策を担当したり、企業のリスクマネジメントの部署で活躍するなど、大学時代に学んだことを生かして安全・安心な社会づくりに貢献している人も多い。

自然災害・社会災害の最小化を目指す社会安全学部で、文理融合の多様な学問を深く広く学び、社会の問題を解決できる人になろう。

 先輩に聞く
社会安全学部 安全マネジメント学科4年
山村紀香さん(西宮市立西宮東高等学校出身)
 生後4カ月だった1995年、阪神・淡路大震災が起きました。当時のことは覚えていませんが、幼い頃から地震や防災に関する話を聞いて育ちました。そして、将来の進路を考え始めた高校1年生のとき、東日本大震災が発生し、地震について学べる大学に進学しようと決めました。入学後は、社会安全学部での学びを通じて文理融合の視点で地震などの災害を多角的にとらえられるようになったと思います。
 3年次に林先生のゼミに入ってからは、提携する台湾を訪問し、1999年の地震で被害を受けた建物や地震博物館などを訪れました。また、学部の国際防災インターンシップの制度を利用。神戸にあるアジア防災センターや国際復興支援プラットフォームでインターンシップを経験しました。外国の研究員に日本の震災や復興の経験を伝えたり、国際的な会議の準備に携わるなど貴重な経験ができました。
  卒業後は京都大学防災研究所に入り大学院生として地震の研究を続けていく予定です。

 

 

 

 

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