第12回を迎えた「地域の伝承文化に学ぶ」コンテスト(國學院大學・高校生新聞社主催)の表彰式が、去る12月4日、國學院大學渋谷キャンパスで開催された。今回は628作品が集まり、最優秀賞から佳作までの入選者が集い、その栄誉に浴した。

 

大学からのメッセージと全体的な講評

主催者挨拶では、赤井益久学長が國學院大學で同コンテストを行う背景について説明する。「我々は一人では生きていけません。地域社会との共存共栄を通して、社会が成り立ち、人間も形成されます。自らの生きる社会を見つめることが現代の我々にはやや欠けているように思われますが、自分のルーツや社会の特色を知ることは、実はとても大事なこと。自らを学ぶという行為は、さらに大きな社会を知る上でとても大切です」と語った。

表彰状授与では、昨年に続いて2度目の受賞となる吉田真菜さん(愛知県立杏和高校3年)の姿も。その後、最優秀賞の受賞者たちが、受賞作についてプレゼンテーションを行った。劇仕立てにする学校もあり、会場の緊張は一気に和んだ。

続く講評では、審査委員長を務める小川直之教授が、全体について語った。「一番重視しているのは水準です。レベルに達していなければ、賞は出さない。ここに来た人は、私たちの出した水準に達した人。ただ、優秀賞を3つ出した地域文化研究部門(個人)は、最優秀賞に少し足りなかったということです。

地域文化研究部門(団体)の徳島文理高校と学校活動部門の亀山高校、就実高校は、甲乙つけ難かった。いずれも調査を積み上げ、実証性が高い研究。亀山高校は、かなり高いレベルまで学術的にも達している。その中で、就実を折口信夫賞として選んだのは、丹念に洪水プレートを研究し、行政と交渉しながら実践したことにあります」と講評した。

 

チームワークが決め手となった地域文化研究部門(団体)

5年前から研究を始めた先輩から引き継ぎ、集大成として応募した徳島文理高校郷土研究部の3人。地元に多く立像する「高地蔵」をテーマにした研究で、地域文化研究の団体部門で最優秀賞を受賞した。松原圭佑君(1年)は「高地蔵は、ものによっては数メートルもあり、1人では高さを測るなど難しい部分が多かった。3人のチームワークがあってできた研究です」と話す。今回の調査で、文献に載っていない高地蔵も発見したという。引き続き、まだ調査していない地域にも活動の幅を広げる予定だ。

残念ながら、最優秀賞の出なかった同個人部門。ただし、優秀賞には3作品が選出され、いずれも劣らぬ秀作だった。

昨年、団体で最優秀賞を受賞した吉田真菜さんは、今年も同じ「祖父江の虫送り」について個人で研究を続けた。中村陽さん(福岡県立修猷館高校2年)は、自身が小学生の時に復興した「飯場神楽」を研究。伊差川彩花さん(沖縄県立首里高校2年)は地元・沖縄の「染織」を取り上げ、本島と離島での違いについて言及する。

民話によって地域の魅力を知る地域民話研究部門

地域民話研究の団体部門で最優秀賞となった岐阜県立益田清風高校。授業「地域研究」を選択した13人の生徒たちが、「山しかない」という地元・下呂市の現状を逆手に取って研究を重ねた結果だ。研究を通じて、いくつもの民話が残る山々が、いかに豊かであるかに気づいた。

現地調査では、片道3時間の登山が大変だったという。代表の細江侑以さん(2年)は、「整備されていない山なので、道に迷ったりすることもありました。山の魅力を知ったからには、地元の人たちに発信していきたいです」と語る。

同個人部門最優秀賞の馬場優菜さん(神奈川・鎌倉女子大学高等部2年)は、日本史選択の2年生全員で応募した。鎌倉女子大学高等部からは、馬場さん以外にも3人の同級生が入賞した。馬場さんは、祖父母のいる佐渡に伝わる民話について、夏休みを利用して現地調査した。特に「安寿と厨子王」に着目。「よく知られた民話なので、多くの人が知っている知識以上のことを調べられるよう努めました」と話す。

行政と連携した私立就実高校が折口信夫賞を受賞

部門を超えて優れた研究に授与される折口信夫賞には、岡山・就実高校歴史研究部が選ばれた。

岡山大洪水の痕跡を示すプレートの調査、保存活動までに至る防災という実践的な意義もある活動が評価された結果だ。過去の災害を風化させず、未来の命を守ろうとする取り組みは行政をも動かし、受賞者たちの先輩は、プレートに注目してもらうための説明板設置にも一役買ったという。

過去を学び、未来へつなぐ。調査研究の社会的意義を明確にした高校生たちの功績は大きい。

 

 「地域の伝承文化に学ぶ」コンテスト入賞者一覧 

 
 
 
 
 
 
 

 

 




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