お弁当甲子園は夏休みの課題として取り組んでいただく学校が多いため、生徒さん個々の取り組みになりがちですが、先生による事前の指導によって、作品の内容や学びの質に変化があるかもしれません。授業で学んだ事を活かし、お弁当甲子園に取り組んでいる、日本大学山形高等学校・家庭科の羽田夏美先生に導入方法を伺いました。

 日本大学山形高等学校・羽田夏美先生に話を聞きました

調理をすることは大切な経験であるためコロナ禍で調理実習ができない中、何かできないか?と考えました。「お弁当甲子園」は『手づくりのお弁当であること』が条件であり、自由度が高いため、料理経験の浅い生徒にとっても取り組みやすいと思い、4年連続で応募しています。また、高校生になると部活動や習い事などもあり、家族と過ごす時間が減っている生徒も多いです。コンテストが家族とのコミュニケーションの一つになるように取り組ませるようにしています。

導入STEP1 「誰へどんなお弁当を作りたいか?」

本校では、家庭基礎の授業を2年生で履修しており、夏休みの課題として「お弁当甲子園」に取り組んでいます。1学期には家族・家庭分野について学び、夏休み前から栄養分野の学習に入るため、その導入として課題を設定しています。家族・家庭分野の学習では、「人生をどうしたいか」「何を大切にしたいか」を考えられるような授業展開を目指しており、その延長として「自分にとって大切な人は誰か」「お弁当を作りたい人は誰か」を考える時間を大切にしています。お弁当を作る相手が決まったら、その相手がどのような人で、どのような状況かを考えながら、適しているメニューを検討するよう指導しています。また、栄養分野の学習を始めたばかりなので、栄養バランスよりも「食事の目的」に関する理解を深めることを重視しています。この指導を通して、栄養分野への導入と意識づけにつながるように工夫しています。

導入STEP2 料理初心者も、前向きにチャレンジ

夏休みの課題の説明をすると、最初は「えー、面倒くさい」といった声が聞こえてきましたが、先輩たちが個人賞、また学校賞を頂いている話をすると、「自分たちにもできるかもしれない」という意識が広がりました。また、本校は野球部が甲子園に出場することが多いこともあり、「お弁当でも甲子園に行ってやる!」という会話が多くのクラスで交わされて、前向きに取り組む姿勢を見せてくれています。料理をした経験がほとんどない生徒が大半で、何をどうすればいいのか分からない中、まずは家族に相談し、アドバイスを受けながら挑戦した生徒も多いようで、コミュニケーションのきっかけになったと感じています。

導入STEP3 家族との時間を大切に

家族の関係性はさまざまですが、本校の生徒は比較的恵まれた環境に育っている場合が多
いようです。しかし、その恵まれた環境を実感していない生徒も少なくないと感じています。今後の人生を考えると、親を含めた家族と過ごせる時間はこれまでの時間に比べて、とても短くなるはずです。特に本校に限らず、高校卒業後には親元を離れる生徒も多いのではないでしょうか。そのような中で、家族と一緒に過ごす時間や、家族を通じて学び、考える機会は非常に貴重です。本コンテストを一つのきっかけに、家族と過ごす時間や1日1日の生活を大切にしてほしいと思っています。

 

 日本大学山形高等学校の受賞作品を紹介! 

【入選】 山之内 咲月 さん  「妹」へ 「母から受け継いだ」弁当

 

これは、10個下の妹のために考えたお弁当です。わたしが小さい頃から母は身体が弱く、がんにかかって入院することもありました。そんな母が、いつかは妹にお弁当を作ってあげて欲しいと、母がいつも作っているレシピを教えてくれました。妹がちゃんと母の味を感じられるように、妹が大好きなからあげと、少し甘めの卵焼きの味を、完全に再現できるように母のものと食べ比べて試行錯誤しながら作りました。また、妹が楽しくお弁当を食べられるように、ちくわにひよこの顔をつけたり、ピーマンやプチトマトで彩りを加えたりしました。このお弁当には、母と妹に安心して欲しいという想いと2人に元気でいて欲しいという想いを沢山こめました。

 

【佳作】 石澤 希尚 さん  「祖父」へ 「好物」弁当

 

僕の祖父は僕が小学生の頃に事故で亡くなってしまいましたが、母から祖父の好物を聞いて、僕の好物と祖父の好物を詰め込んだお弁当を母と一緒に作りました。僕は自分でお弁当を作ったことが無く、うまくできるか不安でした。卵焼きを作るのも初めてでいつかできるようになりたいと思っていたのでがんばって挑戦しました。母の助けもありなんとか完成しました。出来上がって、祖父の写真の前で手を合わせその後僕が食べました。僕は卵が苦手でしたが自分で初めて作った卵焼きはとてもおいしかったです。丁度半分ずつ好物を入れていて、久しぶりに一緒にご飯を食べているような気持ちになりました。

お弁当甲子園の応募概要はこちらからご確認ください

【 お問い合わせ 】
高校生新聞社 コンテスト係
〒194-0022 東京都町田市森野1-34-10
TEL.042-724-2750 FAX.042-724-2710
E-mail contest2025▲sclpa.jp
※▲を@に変えてください
 
主 催:鎌倉女子大学、高校生新聞社
後 援:文部科学省、全国高等学校長協会家庭部会、
    全国高等学校PTA連合会、日本進路指導協会
協 賛:マルコメ株式会社、エバラ食品工業株式会社、
    キッコーマン食品株式会社、株式会社伊藤園