2024年4月、学部学科をリニューアルし、現代に合わせた3学部体制となった神奈川工科大学。同大学の卒業生であるLINE WORKS株式会社の代表取締役CMO(最高マーケティング責任者)・増田隆一さんと現役学生の対談をお送りする。

- 【CONTENTS】
- ■スティーブ・ジョブズと同じ会社で働いていた!? 増田さんってどんな人?
- ■就職後に役立った大学時代の「経験値」
- ■「経験値」として磨いておきたい「力」とは?
- ■教えて!増田さん 私たちからの相談
- ・自分がやりたい仕事ができる会社の見つけ方
- ・自己PRで何を話せばいいか悩んでいます
- ■増田さんから学生に質問!
- ■増田さんから高校生の皆さんへ
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スティーブ・ジョブズと同じ会社で働いていた!? 増田さんってどんな人?
―――最初に、対談に参加してくれる学生を紹介します。
菅原:情報学部 情報工学科 2年の菅原です。メインで勉強しているのはプログラミングで、今はJAVAを勉強しています。それと、学生が相互に助け合う「KAIT pia」という団体の、Web部門で広報活動を担当しています。
松尾:情報学部 情報メディア学科 3年の松尾です。情報メディア学科は、ゲームや音楽や映像などを学ぶ学科で、今は3DやCGも学んでいます。将来はVRやCG、そういうのを混合させた分野に進んでいきたいと思っています。


―――増田さん、自己紹介をお願いします。
増田:LINE WORKS株式会社 代表取締役 CMO(最高マーケティング責任者)の増田隆一です。LINE WORKSはITサービスを提供する会社で、その経営者として仕事をしています。今年55歳になりました。
大学に入学したのは、神奈川工科大学が「幾徳工業大学」から「神奈川工科大学」に名前が変わった1988(昭和63)年です。卒業後はコンピューター系の業種に進んで、ずっとIT寄りの企業で仕事をしています。IT業界は進化が早く、だいたい5年サイクルでトレンドが目まぐるしく変化しています。そうした業界で、ITの進化にあわせて『旬な事業で成長する会社』に移るという自分自身の転職ポリシーで、スキルを磨いてステップアップしてきました。
―――増田さんは、スティーブ・ジョブズと同じ会社で働いていた経験があるとお聞きしたのですが?
増田:新卒で入社した会社で3年働いた後に、Apple Computer Japanに転職しました。当時のAppleは今のように大きな会社ではなかったです。ジョブズがAppleを離れていた時期には、「あと14日間で倒産しそう!」という危機的な状況になったこともありました。ギリギリのところで、ジョブズが戻ってきて強力な製品で業績を持ち直し、会社が段々と元気を取り戻していく状況を体験しました。アメリカと密接に働くポジションだったので、時差もありながら本当に忙しく大変な時期でしたが、タイミングよくスティーブ・ジョブズと同じ会社にいられたのはラッキーでした。
―――IT業界で活躍し続けている増田さんですが、どんな大学生でしたか?
増田:高校の時代は文系を選択していて、大学受験の時に理系に切り替えました。理由は、模試で微分積分と物理の点数が良かったからです。ハンダゴテを握って電気工作するのが好きだったので、当時一番自分がやりたかったことを勉強できる電気工学科*に入学しました。
*現 電気電子情報工学科
でも、2年生になって「本当はコンピューターを勉強したかったんだ!」って気づいて、電気工学科の中で唯一、ワークステーション*を揃えて情報工学の研究ができる研究室に入れてもらいました。卒業論文では、顔認証システムの基礎になるようなことを研究していました。
*業務用の高性能コンピューター
他にも、一般教養の授業で文学の先生と仲良くなり、先生の勧めで小説を書くことになったり、ボランティアで文学の授業を手伝ったりという、電気工学科の中ではちょっと変わった学生でした。

就職後に役立った大学時代の「経験値」
―――次に、私たちが気になっている就職後のお話を聞きたいと思います。就職先では、大学のどんな勉強や知識が役立ちましたか?
増田:大学を卒業してすぐに入社したコンピューターの会社では、研究室で使っていたUNIXとC言語の知識が役立ちました。コンピューターの使い方を教える仕事をしたくて、教育部門に採用していただき、UNIXとC言語のインストラクターになったんです。
ただ、先輩から「知っているのと教えるのは違う。相手がどう理解するのかが、この仕事の一番大事なところだから、最初は教える通りにやって欲しい」と言われて、だいぶ特訓しました。
あとは、商談先で相手の会社のシステムの話になったときに、卒業論文で書いた「顔認証のプログラム」のことを思い出して話したら、「増田さんそのアルゴリズム知っているんですか、それは話が早いな」と商談が盛り上がったこともあります。
そのほか専門知識以外でも、大学で得た「経験値」が役に立っています。

―――その「経験値」とはどのようなものですか?
増田:大学で身につけた「勉強のやり方」は役立っています。会社で未経験の新しいことに取り組むことになった時も、「この辺から紐といてみるか!」といった考え方は、受験勉強ではなく、やっぱり大学で学んだことでした。
ほかにも、1年生の一般教養の授業や先生とのやり取り、自分がたまたま興味を持って調べたことなども色々な場面で役に立ちました。文学の先生に文章力を鍛えられたことも、その1つです。
こうした、大学4年間のありとあらゆる「経験値」が自分の引き出しになって、社会人生活で役に立っているということに気づいたのは、社会人になってだいぶ経ってからです。つまりみなさんも大学生活が充実したら、それだけ社会で活かせることが増えます。だから自分の可能性をどんどん広げるぐらいのつもりで、勉強も遊びもいろいろなことにトライした方がいいのではないかと思います。
「経験値」として磨いておきたい「力」とは?
―――社会経験が豊富な増田さんからみて、社会に出てから役立つ「経験値」となるような、大学生のうちに身につけておくといいスキルや「力」はありますか?
増田:相手に伝える力と、言語力や語彙力ですね。まず日本語を磨くことが大事です。言葉を正確に操り、思い通りに表現できる力量がある人は、どの世界でもどの仕事でも活躍できます。
日本語は普段から喋っているので「私は日本語できます!」って誰でも思うじゃないですか。でも、日本語には2種類あって、会話をする時のカジュアルな日本語と、社会人として必要な日本語では質がまったく違います。この社会で使われる日本語を習得するには時間がかかります。
その力をつけるには、実は新聞がオススメです。新聞で使われている言葉や表現は「日本社会の標準語」なんですよ。新聞を読むという目的を単に時事ネタを知るということ以外に、社会で使われる標準語に馴染む機会だという風に考えるとよいのではないでしょうか。
新聞を読んで社会の標準語を理解する、さらにその言葉を使って正しい文章が書けるようになることが大事です。これ、理系の人は特に大事です。働いているとメールや報告書で作文する機会がたくさんあるので価値があると思います。

―――増田さんが日本語を磨いておいて良かった!という経験はありますか?
増田:若い頃は、自然と自分より目上の人たちと話す機会の方が多くなります。社会人としての日本語の使い方を知っていれば、目上の人たちが使っている言葉の意味や意図が汲めるし、彼らにどの言葉を使えばうまく伝わるかが分かります。交渉事やプレゼンのスライドにいれる言葉の選び方も、新聞で使われている言葉が基準になるとすぐ分かりました。
―――新聞を読む以外にも、社会で使える日本語を磨く方法はありますか?
増田:これも新聞に関わることですが(笑)、日経新聞の一面の下の方にある、「春秋」というコラムを毎日手書きで書き写すという方法があります。手書きするというのが大切なんですよ。
「春秋」というコラムは、毎日違うテーマをまったく同じ文字数で、起承転結で書かれている非常に高水準の文章です。それを手書きで書き写すと、起承転結の構成が手に取るように分かるし、春秋を書いた人が何を伝えたいのかも自分ごとのように分かる。ぴったり文字数を揃えるところまでが自然と学べます。これを1年間でもやって就職したら、入社の時点で周りとの差がつきます。社会に出てからだとやる時間がなかなか取れないので、学生のうちにぜひやってみてください。
―――「相手に伝える力」も大切とのことですが、どんな場面で役立ちましたか?
増田:「相手に伝える力」とは「どの言葉を使うか」です。社会に出ると「1分でプレゼンをしてください」、「5分でお願いします」みたいなシーンはすごく多いのです。まずは、決まった時間内にプレゼンを収めることが大事ですが、その上で「相手に伝わりやすい言葉で語る」ことが評価されます。
経験を積むと限られた短い時間の中で相手にどう伝えるのかを考える癖がつきます。さらに、相手の立場だったりカルチャーだったり、年齢であったり、相手が受け取りやすい適切な言葉で話せるかどうかが、社会で生きていく上ですごく大事です。
演劇や映画などで心にグサッ!ときた言葉を、心の引き出しに入れて貯めておくことでも磨けます。そういう言葉は、広告のキャッチコピーのように人の心を動かす力があるので、私の場合はマーケティングの仕事でも役立っています。

教えて!増田さん 私たちからの相談
―――この機会に、増田さんに聞いてみたいことはありますか? 菅原君はいかがですか?
菅原:どうしたら自分がやりたい仕事ができる会社に入れるのか、自分が行きたいと思う場所に行けるか、その見つけ方はありますか?
増田:私は入学した時から就職を意識していたので、キャリア就職課の会社案内が置かれている部屋によく行っていました。知っている会社から順番に見て行くと、大学の先輩がいるかどうかも分かるし、知らない会社でも漠然と何か気になると思う会社をチェックしていました。自分のやりたい仕事が何なのか?というのは、ずっと頭の隅にあったと思います。
あとは、いろいろな業種のアルバイトをやりながら社会構造について考えたりしました。ほとんどの仕事には興味をもてなかったのですが……。その過程で3年生の頃に「自分はコンピューターを教える仕事をやりたいんだ!」と気づいたのです。人生長いし、いろいろ見ていろいろ経験するうちに興味関心は移り変わりますから、最初からあまり決め込まずに自分の価値基準で判断していくのがいいと思います。

―――松尾さんはいかがですか?
松尾:面接で「自分のことをPRしてください」って言われると、「この人達は私に何を聞きたいのだろう?」って思って考えこんでしまいます。PRってどういうことを話せばいいのですか?
増田:就活の話ですよね?
松尾:就活だけじゃなくて、学生生活でのいろいろな場面での面接でのことです。
増田:自己PRは単純に短い時間で、自分の人となりを知ってもらう「自己紹介の時間」なので、強くアピールすることを意識しなくていいと思います。私はこういう風に育ちましたとか、こういうのに興味を持っていますとかが悩まずに済むのではないでしょうか。
自分はこういう人物です、こういうのが大好きです、こういうモノに興味がありますとか、そういう話ができれば、自己PRの「頭出し」はOKです。すると相手から「なぜ?」って聞かれるんですよ。例えば「私は犬が好きです」に対して、「なぜ犬が好きなんですか?」と質問されます。
そういう「なぜそうなのか」というやりとりを3回ぐらいできたら、自己紹介は終わりにできます。だから、最初から相手に受けがいいものを探そうとしなくても大丈夫。後に続く質問と回答を通じて人柄や熱量が伝わるものだと思います。

増田さんから学生に質問!
―――増田さんから、菅原君と松尾さんに聞きたいことはありますか?
増田:神奈川工科大学に入学して一番良かったことはどんなことですか?
松尾:やっぱり一番お世話になっている教授と出会えたことです。あとは本当によくしてくださった先輩。先輩と出会えたことが、私のいろいろな転換点になっています。
菅原:自分はKAITpiaに入ってから、人との関わりが増えています。行動を起こすのが苦手で立ち止まっちゃうタイプなので、「行動したい派」の人が多い環境に行けば、自分もできるんじゃないかと思って入りました。今、ハッカソンに出てみようと話しています。
増田:2人の話をお聞きしていると、改めて神奈川工科大学の環境は恵まれているなと思いました。いろんな人と出会って交流する機会があるというのは、実は一番大事なことだと思っています。相手は自分にないものを必ず持っているんですよね。興味を広げていくチャンスは人に会うことなんです。
今日、久しぶりに大学に来たら「KAIT AI research zone」と書かれた建物がありました。ああ、神奈川工科大学は、世の中の最先端を大学として取り入れているのだなと気がつきました。AIに興味のある人たちが集まって、専門の先生たちもいて、その人たちと一緒に話ができるというのが、すごく恵まれていてうらやましいです。
こういう環境が大学にあるなら飛び込んでみてフルに活用したら良い学生生活が送れると思います。就職とかを意識した損得ではなく「自分がそこにいて、それをやって楽しいかどうかという価値基準」で時間を使うことができるのも大学の良いところです。そこで会った人たちと「どんな時間を過ごすか」を意識するだけでも、大学生活は豊かになります。そうすると、大学で何を得て、自分は将来に何がしたいか?という答えも自然と出てくると思います。
高校生の皆さんへ
―――最後に増田さんから、これから大学で勉強したいと思っている高校生にメッセージをお願いします。
増田:ネットで探したら何でも答えが見つかる時代ですが、そういう時代だからこそ、何か他の人と違う行動をしてみたり、一歩踏み出したりすることにすごく価値があります。興味を持った相手には、恐れずに話を聞きに相手のドアをノックしにいきましょう。多くの相手は自分に興味を持ってもらえたことがうれしいと思うし、その先で自分のことを気にかけてくれたり、助言してくれたりということもあります。
それと、進路は「何を学べる場所に行きたいのか」ということを最優先に考えるといいです。大学のブランドとかではなくて、「ここでしか学べないことで、同じことを学びに来ている仲間ができる」っていうのは、長い人生の中でとても価値のあることです。そこに重きを置いた受験をしたらいいんじゃないかと思っています。
私は、大事なことを神奈川工科大学で学びました。神奈川工科大学で学べる「テクノロジー」は私たち人類の生活水準を上げたり、世の中を良くする為にあります。エネルギーの使い方にしても、ネットのスピードにしても「世の中が良くなる、生活が進化する方向には必ずテクノロジーがある」ということを、最初に学ぶ機会になったのはここ神奈川工科大学でした。この大学で育てられて今があるので、自分の役割として少しでも世の中に還元していきたいと思っています。
みなさんは、これから出会う人たちとのご縁を大切にして、自分の世界を広げることに貪欲に、学生生活が飽きるぐらいに楽しんでください。

この夏は神奈川工科大学のオープンキャンパスへ! 7月28日(日)・8月10日(土)・8月25日(日)に開催 詳しくは受験生サイトへ
提供:神奈川工科大学