文部科学大臣賞

「パラリンピックから世界を平和に」

順天高等学校2年 柴田 藍

 

 「あなたは世界には障害を持っている人が何%いると思いますか。」
「それは約10%です。そしてそのうちの80%の人が開発途上国の人なのです。」

こう私に教えてくれたのは、イギリスのストーク・マンデビル病院のスタッフだ。私は今年の夏、障がい者スポーツを学ぶために「トビタテ!留学JAPAN」の留学支援を受けて、パラリンピックの発祥地に行ったのだ。

私がパラリンピックに関心を持ったのは3年前の父の交通事故がきっかけだ。父は障害を負い職も失った。職業訓練の末にやっと再就職を果たした後も、毎日リハビリを欠かさない。それはパラリンピックに憧れがあるからだと知った。そして調べてみようと思い初めて動画で競技を観た時、オリンピックとは違う圧倒されるものが迫ってきた。それは過酷な状況を克服する人間の強さを目の当たりにしたからだ。

もっと多くを学びたいと思い渡英したストーク・マンデビル病院に隣接するスタジアムには、子供から年配者まで健常者と障がい者が設備を共有している姿があった。車椅子のまま入れるプールなど日本ではあまり見ることの出来ない景色がここでは日常的なことなのだと強く印象に残った。

そして障がい者の80%が開発途上国の人だと教えられ驚いた。私は子供のころテレビで観た、地雷を踏んでしまうのではと不安そうに砂利道を歩くアフリカの子供たちのことを思い出した。自分の暮らしとの大きな違いに衝撃を受け忘れられなかったのだ。地雷を仕掛け「人を傷つける」ことで戦力を奪うのだ。それによって障害を持った人が多数いる。地雷だけではない。最近まで戦争があった国、あるいはまだ続いている国では数えきれない危険がある。貧困のため教育や医療が不足し開発途上国は障がい者の割合が大きい。

そして、傷ついた心と体を癒やすのはとても難しい。事故後、父は失望感と喪失感を抱えて苦しんだ。だからこそ職を得てからもリハビリを続けたのは、スポーツから自信と楽しさを得られるとわかったからだ。だから私はスポーツが傷ついた彼らの力になるのではないかと考えている。体力と自信を回復させ、仲間をつくるスポーツに救われる人も多いはずだ。そしてパラリンピックを知り目標にする選手が増え将来出場がかなえば、障害をもった子どもたちも自分の国の憧れの選手を見つけこんなふうになりたいと思うのではないか。今はまだ環境が整わず難しいことだが、いつの日かその国でパラリンピックを開くことができたのならどうだろうか。遠い日の夢だと思われても、そのために今から私にできることを考えている。まずは2020年の東京パラリンピックのボランティアになることだ。語学力をつけ、競技を学び選手に寄り添う。そして障がい者スポーツがまだ認知されていない国でどう広めるか考えていく。毎日の生活が困窮している時にスポーツは考えられないことかもしれないが、平和で平等な世界を目指すのなら遠い目標でもやり遂げていきたい。




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