2011年3月11日に起きた東日本大震災を、当時幼かった今の中高生はどのくらい知っているだろうか? 2023年11月、復興庁は中高生が東日本大震災の被災地を巡る「『福島の今』を知る視察ツアー」を実施した。日程は2日間。全国8都道県・21校の中高生が約70人参加した今回のツアー詳細とともに、彼らの声を紹介する。
現地を訪れ「福島の今」を知るツアー
復興庁は2022年度から、中高生に福島県の現在を正しく知ってもらうために、復興の現状を伝える「出前授業」のほか、被災地を巡る「現地視察ツアー」を実施している。2023年度のツアーは11月11日(土)~12(日)の2日間にわたり行われた。

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【スケジュール】
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<11月11日(土)>
道の駅なみえ(浪江町)
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震災遺構 浪江町立請戸小学校(浪江町)
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東日本大震災・原子力災害伝承館(双葉町)
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ナショナルトレーニングセンターJヴィレッジ(楢葉町)<11月12日(日)>
フィールドワーク(富岡町/大熊町/楢葉町)
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四倉漁港(いわき市)↓
ワンダーファーム(いわき市)
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いわき・ら・ら・ミュウ(いわき市)
視察ツアーについて詳しくは復興庁サイトをチェック!
被災当時のままの遺構に息をのむ
東京駅からバスに乗り、約3時間半で福島県浪江町に到着。一行が最初に訪れたのは「道の駅なみえ」だ。2020年8月に浪江町の復興のシンボルとしてオープンし、買い物や食事の場所として人々の暮らしを支えている。ツアーに参加した中高生は、請戸(うけど)漁港に水揚げされたしらすがたっぷりのった釜揚げ丼のランチを楽しんだ。

次に訪れたのは、 津波によって被災した旧請戸小学校。天井や壁は剥がれ落ち、窓ガラスも割れたままなのは「震災遺構」として後世に残すため。震災当時と変わらない激しく損傷した姿に、中高生たちは慎重な面持ちで対峙する。

請戸小学校の次に訪れたのが東日本大震災・原子力災害伝承館だ。地震・津波だけでなく、原発事故という複合災害に直面した福島県。その記録と記憶を伝える伝承館は、特に印象に残った施設として多くの生徒が挙げていた。

初日の最後は、ツアーの宿泊先でもある「Jヴィレッジ」。ここは、日本初のサッカー・ナショナルトレーニングセンターとして1997年にオープンし、サッカー日本代表の合宿で利用されたこともあり、テレビのニュース映像などでも見かける施設。震災で大きな影響を受け、原発事故収束のための拠点として8年間使用された場所でもある。
ここでは見学だけではなく、チーム対抗のウォーキングサッカーや1日を振り返るグループワークなどを行った。

実際に見て、感じ、語り合い、そして未来に向けて考える
2日目は、被災した町を巡るフィールドワークからスタート。3つのエリアに分かれ、ガイドとともに実際に町を歩き、震災から復興までの経緯を学ぶ。エリアの1つである楢葉(ならは)町は、全町避難となったが、4年半後の2015年にはすべての避難指示が解除され、避難した人たちが故郷に戻って生活するための環境が整えられている。道路や建物などの復興がほぼ完了している町の様子を目の当たりにしながら、生徒たちは歩いて回った。

次に訪れたのは、いわき市の四倉漁港。常磐沖はプランクトンが多く発生する豊かな漁場だが、漁港はがれきの山に。がれき撤去後も、原発事故の影響で操業自粛を強いられた。生産量回復を目指す取り組みについて話す漁業関係者の声に、真剣に耳を傾ける生徒たちの様子が見られた。

その後は、トマトのテーマパーク、レストランなどを併設した複合施設「ワンダーファーム」へ。地元シェフによるアンコウの吊るし切りパフォーマンスや福島の海鮮をつかったバーベキューを、参加者たちは存分に楽しんだ。

生徒一人一人が濃密な時間を過ごした今回のツアー。最後にこの2日間で学んだこと、感じたことをそれぞれが言葉にして発表する「未来宣言」が行われた。
- 【ツアーに参加した高校生の声】
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現地に行かないとわからないことがたくさんあるということを学びました。現在の復興した姿になるまで、どういうふうに町の人たちが頑張ってきたのか、映像や写真だけではわからなかったことがあると思いました。水産業や農産業だけでなく、スポーツ産業など、いろんな職種や産業で復興に力を入れているということを知ることができました。また、福島の美味しいものを実際に食べ、食材の安全性を理解できたので、福島県産の食材に疑念を持っている人たちに安全性や美味しさを伝えたいです。お話を聞いた中ですごく心に残ってる言葉があります。それは「安全と安心は別物である」という言葉です。東日本大震災が起きたという事実は残念ながら変えられませんが、この経験を生かすことならできると思います。悲しい思いをする人がこれから少しでも減るように、自分たちのできる小さなことからでも見つけてコツコツと取り組んでいくことが大切だと思いました。被災地には、自分たちが考えていたよりもっと複雑な本音があり、被災地とその外にはさまざまなギャップがあると感じました。たとえば福島県には再興に向けた思いがあるのに、やはりまだまだ外ではあまり熱気がなかったり。今回学んだことを通して、私たち一人ひとりがまずは自分たちの声を使って、直接地道に伝えていくこと、自然に発信していくことが大事だなと思いました。実際に行くことで、福島についてより知ることができたので、自分の目で確かめることが大切だと学びました。自分たちができることは、まず知ることと伝えること。自分たちが、なぜ福島に対して不安な感情があるのかなと考えたとき、「見えないから」という理由もやっぱりあるんじゃないかなと思いました。写真など、見える形でまず発信していくことで、少しずつ誤解を解いていけるんじゃないかなと思いました。自分たちが知っていた以上に、被害の爪痕は色濃く残っていました。それを知らない人に知らせることは大事だと思います。でも過去の大きな被害だけに気を向けていると、福島の未来に目を向けられないんじゃないかと考えました。今、放射線量を細かく調べて安全性を確かめたり、素敵な新しい学校を建てたり、移住するための住宅を建てたり。福島は、将来より良い地域になるためにどんどん進んでいます。それでも人口が戻ってこないといった課題も抱えていて、そういうこれからのことについても発信する必要があると思います。
ツアー参加者の声として多く聞かれたのが、被災にあった地域の今を、正しく知ることができたという意見。復興庁では、科学的根拠に基づく正確な情報の発信に取り組んでいる。サイトや出前授業、被災地ツアーなどを利用して積極的に情報を集め、被災地の今をより深く知り、考えていってほしい。
視察ツアーについて詳しくは復興庁サイトをチェック!
提供:復興庁