2024年4月に2つ同時に誕生する千葉工業大学の新学部「情報変革科学部」と「未来変革科学部」。それぞれの学部・学科に所属する先生に高校生記者が特別に取材した。今回登場するのは脳科学を医療に応用することを視野に研究を続ける「情報変革科学部 情報工学科」の信川創教授だ。

信川創教授と高校生記者のhinataさん

脳の「構造」「活動」「機能」にまたがる部分を研究

私の研究は、「計算論的神経科学」です。脳科学では、脳の「構造」「活動」「機能」に分野が分かれます。活動というのはたとえば脳波のこと。機能というのは、「記憶する」「学習する」などのいわゆる認知機能のことになります。

「構造」「活動」「機能」の領域で独立した研究が行われているのですが、それぞれの関係性に注目するのが私の研究です。「構造」がこうだから、こういうような「活動」が生まれました、というような説明ができるようにするのが、計算能的神経科学なんです。

たとえばアルツハイマーとか自閉症、統合失調症などのさまざまな精神疾患。今それらが医療の現場でどういう風に診断されているかというと、基本的に「問診」なんです。

体のさまざまな状態を定量的に数値化する指標のことをバイオマーカーと言います。「血圧」「体温」「血糖値」は、全部数値で測ることができますよね? 同じように精神疾患でも数値で捉えられるようになりたい。問診だけじゃなくて、たとえば脳波や瞳孔の動きなどから、診断をサポートするようなツールを「バイオマーカー」として提供したいというのが研究の1つの目的です。

問診しかできない病気に数値化をもたらす

なかでも注目しているのが瞳孔。瞳孔は脳内の神経核とつながっていて、脳内の活動が瞳孔径の動きとしてあらわれるんです。瞳孔径でないと捉えられない脳の領域もあり、脳波を測るよりも深い情報を得ることができます。

瞳孔径を測る眼鏡を着用

とくにADHD(注意欠如、多動症)の患者さんの特性として、瞳孔径が少し開いた状態になっていることがわかっています。瞳孔径とADHDの関係を調べることで、バイオマーカーとしての精度を高めていく研究をしているのです。

将来的には、従来では問診だけに頼っていたような病気に対して、医療をサポートしていけるようなバイオマーカーを作り、支援ツールとして確立していきたいと考えています。

 

hinataさん

インターネットなどで、よく見かけるようになったADHDという言葉。診断の際は問診が主な手段となっていますが、信川教授のこの研究が進めば、将来はADHDの診断において新しい1つの評価基準となると聞きました。とても画期的なアイデアで、実現されたら多くの人の役に立つだろうと強く感じました。教授の研究内容は、目に見えない分野なので難しく、理解するのに時間がかかってしまいました。それでも私の質問に対して一つ一つ丁寧に答えていただいたことがとても印象に残っています。結果的に、私のようにまだ何も知らない高校生でも、概論を理解することができました。理解すると、研究内容のすごさがグッと伝わってきて、とても関心が湧きました。私たちの身体構造を数値化するなんて、全く未知の世界でしたが、本当に興味深いと感じました。

 

提供:千葉工業大学