部員自身で選んだ重さのメディシンボールを使って腹筋運動を行う

兵庫(兵庫)陸上競技部は、全国レベルの強豪校がひしめく近畿で、昨年の近畿ユース選手権(新人戦)の男子総合7位に輝くなど健闘している。一方で部員の大半は国公立大学への進学を志望し、昨年は京都大に2人が現役合格するなど、勉強も妥協しない。型にはめない練習スタイルで文武両道を実践している。(文・写真 中尾義理)

メニューを自分に合わせる

グラウンドは硬式野球部、サッカー部、ラグビー部などと一緒に使い、陸上部の走路スペースは幅約10メートル、長さ約80メートル。短距離・フィールドは毎日の練習メニューが走路脇の物置に張り出され、長距離は2~3週間分の練習メニューを先生から渡される。

とはいえ、与えられた練習メニューを忠実にこなすのか、あるいは自己流に距離やタイム設定を変えるのかは、選手に委ねられている。一日の練習の仕上げに行う腹筋運動用のメディシンボールも、自分で重さを選ぶ。時には顧問から「それ、軽いんちゃうか」と突っ込まれることも。

放課後の練習は完全下校時間までの約2時間。日々バタバタと練習時間が過ぎていく。

使えるグラウンドの狭さや短い練習時間はハンディではない。選手たちは昼休みに補強トレーニングを行ったり、交流のある他校のグラウンドで合同練習したりして、各自が足りないと感じる分をカバーしている。

記録更新は「自己責任」

高橋佑輔(3年)は昨年、800メートルと1500メートルの2種目で全国出場。秋の日本ユース800メートルでは4位に入賞した。練習では「1000メートル2分55秒+200メートルフリー走」の場合、「もっと速くていいですか」と1000メートルを2分45秒で走る。

練習メニューは「自分はこうしたい」とアレンジすることが歓迎されている。

それで記録が伸びるか、伸びないかは自己責任。だが、高校時代に自己ベストを更新できなかった選手はほとんどいないという。選手の自己判断でフレキシブルに練習するのが「兵庫流」といえそうだ。

ウオーミングアップ
校外に走りに行く長距離の部員もウオーミングアップは
80メートルの走路を数往復する
ラダー
脚の素早いさばきを意識して行う

ミニハードル走脚のピッチを意識して行うミニハードル走では男女で切磋琢磨(せっさたくま)する。女子は男子に勝ちたいし、男子は女子に負けられない
 

 「型にはめず、目標言わせず」原田宏明先生(中長距離担当)

ミーティングは、あまりやりません。目標を言わせたり書かせたりもしません。こちら側から「こうしなさい」などと限定しない方がいいと思っています。勉強も自己責任。型にはめるのは、私のスタイルではありません。

「目標達成のために考える」田中暢人先生(短距離・フィールド)

中学で陸上を経験していない部員も頑張るのが兵庫のいいところ。SGH(スーパーグローバルハイスクール)らしく海外学習に行く部員もいて、いろいろな面で旺盛です。与えられた環境でどうすれば自分の目標をクリアできるか考え、練習していると感じます。

(左から)原田宏明先生、岡田智士先生、田中暢人先生
【TEAM DATA】
部員56人(3年生13人、2年生28人、1年生10人、マネジャー5人)。校舎が立つ場所が かつて「武陽ヶ丘」と呼ばれていたことから、チームスローガンは「武陽魂」。