四年制大学に通う学生の約半数が奨学金を利用しています。ただ、国(日本学生支援機構)、自治体、民間、それぞれが給付型、貸与型の奨学金を運営し、申し込みや返済 には注意が必要です。奨学金アドバイザーの久米忠史さんへの取材に基づき、ポイン トをQ&A形式でまとめました。

Q. 奨学金には、どんな種類があるの?

公的な奨学金としては、国の奨学金である「日本学生支援機構奨学金」と、都道府県や市区町村といった地方自治体の奨学金がある。

民間の奨学金としては、企業や民間育英団体などが運営している奨学金や、新聞販売店に住み込みで働くことで給与と奨学金が支給される新聞奨学金などがある。また、これらとは別に、それぞれの大学や短大などが独自で実施している奨学金制度もある。

最も利用者が多いのは、国の奨学金である「日本学生支援機構奨学金」。収入状況が厳しい一部の世帯を対象にした給付型のものと、返済の義務がある貸与型のものがあり、貸与型には無利子のもの(第一種奨学金)と有利子のもの(第二種奨学金、入学時特別増額貸与奨学金)がある。

Q. 「給付型」と「貸与型」の違いは?

「給付型」は返済不要の“もらえる”奨学金であり、一般的に成績と家庭の収入状況をもとに審査される。日本学生支援機構奨学金では収入状況が重視される傾向があるのに対し、民間や大学独自の給付型の奨学金では成績が重視されるケースが多い。

一方の「貸与型」は“借りる”奨学金なので、大学卒業後に返済する義務がある。月々の返済額は借りた総額や無利子か有利子かによって異なり、返済期間は約10年から20年という長期にわたる。

なお、地方自治体の奨学金や民間の奨学金には、奨学金そのものは貸与型でも、奨学団体が設ける一定の条件を満たせば返済が減免されるものもある。この場合、返済が免除されれば、実質的には給付型の奨学金になる。

地方自治体の奨学金では、このようなタイプも含め給付型のものが約4分の1と増加傾向にあり、新設されるケースも多いので、最新の情報をチェックしておこう。

 

Q. 国の新たな修学支援制度の仕組みと対象者は?

家庭の収入状況にかかわらず、大学、短大、高等専門学校(4・5年生)、専修学校(専門課程)への進学のチャンスを確保できるよう、2020年4月から高等教育の修学支援新制度がスタートしている。

この制度は、住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯の学生等を対象に「給付型奨学金」と「授業料等の減免」の二本立てで進学を支援しようというもの。ひとり親家庭の場合などは支援対象となる可能性があるため、自分が該当するかを日本学生支援機構のホームページなどで確認しておこう。

Q. 日本学生支援機構の奨学金の「予約採用」と「在学採用」の違いは?

日本学生支援機構奨学金の申し込み方法には、進学前に申し込む「予約採用」と進学後に申し込む「在学採用」の2種類がある。

申し込む場合は、高3の1学期ごろに高校を通じて申し込む「予約採用」が主流となっているので、高校で配布されるプリント等を見逃さないことが大切だ。「予約採用」の申し込みが間に合わなかった場合は、進学後に大学などを通じて申し込む「在学採用」の情報を忘れずにチェックしよう。

「予約採用」では収入基準外となってしまう場合でも、「在学採用」では基準を満たすことがある。「予約採用」で収入基準外となってもあきらめずに、「在学採用」の情報収集をして可能性を探ってみるとよいだろう。

 

Q. 入学手続き費用も奨学金でまかなえる?

奨学金の支給が始まるのは進学後の4月以降となるため、入学金や前期分授業料などの入学手続き費用を奨学金でまかなうことはできない。

総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(旧推薦入試)などで合格した場合は、一般入試よりも入学手続きの時期が早いので、それまでに必要な費用を準備しておく必要がある。

有効な手段としては教育ローンがあり、国(日本政策金融公庫または沖縄振興開発金融公庫)の教育ローンでは、低所得、ひとり親、多子世帯などは利息等の優遇制度がある。

こうした優遇が受けられる国の教育ローンの方が、進学先の学校が提携している民間の教育ローンよりも利息を抑えられるケースが多いので注意しておきたい。

Q. 奨学金の返済義務は保護者? 学生本人?

奨学金は進学を叶えるための力強いサポートとなる一方で、貸与型の場合には返済の義務を負うことになる。

申し込むにあたっては、「自分は何のために進学するのか」「進学先で何を学び、どう成長したいのか」という目的を明確にしておこう。

なお、教育ローンは保護者が契約するのに対して、奨学金の契約者は保護者ではなく学生自身となる。

貸与型の返済義務を負うのも学生自身となるため、申し込み手続きは保護者任せにせずに、保護者とよく相談しながら学生自身が申込書類を記載するなど、当事者意識を持つことを心がけてほしい。

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久米忠史(くめ・ただし)さん

株式会社まなびシード代表取締役。奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。

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