多くの大学では独自の奨学金制度を設けており、返済不要の給付型のものが多いのが特色です。志望大学を検討する時点で大学独自の奨学金について調べてみると、進路の選択肢が増えることも。押さえておきたいポイントについて、奨学金アドバイザーの久米忠史さんへの取材に基づき、Q&A形式でまとめました。

Q. 大学独自の奨学金って、どんなもの?

支援額や支援対象、支援方法などは大学ごとにさまざまで、複数の奨学金制度を実施している大学もある。

収入状況が厳しい家庭の学生を対象としたニードベースのもののほか、入試の成績優秀者やスポーツ・文化活動で優れた実績を持つ学生を確保するための施策としてのメリットベースのものもあり、全体の内訳としてはメリットベースの「特待生制度」「スカラシップ入試」などが多い。

約87%が返済不要の給付型だと報告されているが、入学金や授業料の全額あるいは一部が免除になる減免型の場合もあるので、詳細はよく確認しておこう。

 

Q. 最近の傾向として知っておくとよいことは?

大学独自の奨学金の多くは入学後の申請であり、奨学金を受けられるかどうかが入学後までわからないために資金計画が立てにくいというケースが従来は少なくなかった。こうしたデメリットを解消するために、近年では奨学金の可否が受験前に判明する「入学前予約型給付奨学金」を設ける私立大学が増えてきている。

「入学前予約型給付奨学金」は、世帯収入と高校在学中の成績の両方について基準が設けられているケースが多く、ニードベースとメリットベースの性格をあわせもつ奨学金だといえる。この奨学金を受けられることが決まれば、合格して入学した際には確実に奨学金が支給されるため、進学にあたっての資金計画が立てやすくなる。

また、以前は首都圏の大学であれば首都圏エリア以外の学生を対象にするというように、地元ではない地域から優秀な学生を集めることを目的としていた奨学金が多かったが、近年では地元エリアの学生にも支援を広げる大学が増加傾向にある。

一方で、沖縄や離島などの特定のエリアの学生を対象とした独自の奨学金を設ける一部の大学では、ホームページ等では情報を公開せずに、資料請求をした該当エリアの学生のみを対象に書面等で案内をしているケースもある。進学先候補として考えている大学には、早めに資料請求をしておくとよいだろう。

 

Q. 申し込みの期間は?

国の奨学金である「日本学生支援機構奨学金」の予約採用は高3の1学期ごろに申し込みを済ませる必要があるのに対し、大学独自の「入学前予約型給付奨学金」では、高3の秋以降でも申し込みを受け付けているものもあるので、詳細はそれぞれの大学のホームページ等で確認を。

また、大学入学後に申請をして、2年次より支給が始まるものも多いため、入学後もこまめに情報をチェックしてみよう。

Q. 大学独自の奨学金を申し込む場合の注意点は?

大学独自の奨学金は、高等教育の修学支援新制度(収入状況が特に厳しい家庭を対象に「給付型奨学金」と「授業料等の減免」により支援する制度)との併用はできない場合が多い。

また、国公立大学では、これまで収入状況が厳しい学生を対象に学費の全額または半額を免除する制度が設けられていたが、2020年4月より高等教育の修学支援新制度が開始されたことを受けて、各大学単位での奨学金制度は縮小される傾向にある。

高校の先輩などから聞いた話と現在の制度が異なっているケースもあるため、最新の情報を確認することを心がけてほしい。

また、大学独自の奨学金は、支援対象となる基準が大学によってさまざまなので、ある大学の奨学金では対象外でも、別の大学では対象となるケースもある。

特に、医療・看護、福祉、保育などの領域で国家資格を取得することを目的として進学する場合には、自分が目指す資格分野系統の多くの大学の支援制度を調べてみると、選択肢がより広がるはずだ。

【出願前に必ず読もう】大学独自の奨学金をまとめてチェック

 

久米忠史(くめ・ただし)さん

株式会社まなびシード代表取締役。奨学金アドバイザーとして2005年から沖縄県の高校で始めた奨学金講演会が「分かりやすい」と評判を呼び、全国で開催される進学相談会や高校・大学等での講演が年間150回を超える。

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