京都・八坂神社で香港からの観光客(写真中央)をガイドするPIPSメンバー

日本を観光に訪れる外国人が増える中、高校生もボランティアガイドとして活躍している。学校を超えた有志団体「PIPS JAPAN(ピップスジャパン)」では、高校生らが観光客に声を掛けながら、英語で日本の文化や歴史を伝えている。2020年に開催される東京五輪・パラリンピックでも活躍しようと意気込んでいる。

観光客から「Good」

日曜日の5月23日、PIPS JAPAN関西支部の高校生5人が、世界から多くの観光客が訪れる京都の八坂神社に集まった。予約客を案内する2人と、「FREE GUIDE」のボードを持って観光客に声を掛ける3人に分かれて活動を始めた。

2人はまず、フェイスブックで予約があった香港出身のヴィンセント・ウォンさんを最寄り駅で出迎えた。八坂神社に祭られている複数の祭神や境内に湧く「美容水」の言い伝えなどについて英語で説明。「水に触れてみませんか」「舞妓(まいこ)さんのこと、知っていますか」など質問を投げ掛け、京に残る日本文化についても解説した。石畳に京町屋が連なる花見小路を歩きながら、話題は香港の習慣や日本との違いにまで広がった。

別れ際、ウォンさんはPIPSのメッセージブックに大きく「Good」と書き、「一生懸命説明してくれてうれしかった」とメンバーに香港のお土産を手渡した。約30分のガイドで、高校生との距離が縮まったようだ。

「意外な質問」通じ成長

PIPS JAPANのメンバーは、帰国子女など海外経験豊富な高校生もいるが、多くは最初から流ちょうな英語を話していたわけではない。また、活動する際は2人以上で行動し、日没後は活動しないなど、安全面に配慮している。

昨年12月から活動する則本菜奈子さん(兵庫・三田学園高校3年)は「高校1年生でアメリカへ留学した時、日本について聞かれたのに、ちゃんと答えられなかった」。帰国後、日本について英語で伝える訓練を積もうと参加した。

「お参りの仕方や巫女(みこ)が着る袴(はかま)の色など意外な質問をされ、答えられなくて焦った経験もある」と則本さん。ガイドの後にはメンバーが集まって反省会を繰り返し、観光客のリクエストに応じた案内ができるよう成長を目指す。

東京五輪でも役立ちたい

関西支部の代表、横山菜乃さん(大阪・関西学院千里国際高等部3年)は「目標はI Love Japan,because of you (あなたのおかげで日本が好きになった)と言ってもらうこと。2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて頼られる存在になりたい」と語る。
(文・写真 新海美保)

PIPS JAPAN

2014年3月、当時高校1年生だった代表・冨田夏美さん(現・早稲田大学1年)が設立。留学やワーキングホリデーで日本に訪れる外国人に英語を習った経験から、「恩返しがしたい」と英語での観光ガイドのボランティアを思いついたのがきっかけ。東京(約30人)と関西(約20人)の2つの支部に分かれ、高校生が中心となり活動している。大切にするのは「日本人らしさ」「細かい気配り」「チャレンジ精神」。PIPSとは種という意味で、「タンポポの綿毛のように活動が広まってほしい」(冨田さん)という願いが込められている。今後、さらに支部を増やす予定だという。

八坂神社の前でボードを掲げて声を掛ける則本さん(右から2人目)と横山さん