「寝ても寝ても眠い」「すっきりと目覚められない」といった睡眠に関する悩みの原因と対策について、睡眠科学を専門とする医師の大川匡子先生(睡眠総合ケアクリニック代々木理事)に聞いた。(野口涼)

Q. 寝ると頭がよくなるって本当?

A. 暗記したものを忘れる確率が低くなる。

 

睡眠時間を十分にとっている子どもは、睡眠時間が短い子どもに比べて、記憶にかかわる海馬の体積が大きいことがわかっています。学習したことを頭の中に保管し、上手に取り出せるようにするには、眠りが大きな役割を果たすのです。

例えば世界史の人名や年号を暗記したとき、覚えたことの半分くらいは数時間以内に忘れてしまうのが普通。一方、暗記勉強をした直後に睡眠をとると、そのまま起きていた場合に比べて忘れる確率が低くなります。

眠りでスポーツが上達する

学習に関する記憶だけではありません。スポーツなどの技術の習得などについても同じことがいえます。睡眠中は脳の神経細胞レベルで変化が起こり、記憶を定着・強化するシステムが働いています。 学習の成果を上げるには「繰り返し行う」ことと同時に、「適切な睡眠をとる」ことも重要です。

なお、睡眠が不足しがちな高校生は、昼休みの時間帯に15分程度の短時間仮眠をとると学力が向上するという報告もあります。ただし夕方の仮眠は体内時計をずらしてしまうから避けるようにしましょう。

 

大川匡子先生

おおかわ・まさこ  医学博士。睡眠総合ケアクリニック代々木理事。携わった書籍に『睡眠障害の子どもたち』(編著)、『睡眠のなぜ? に答える本』(監修)など。