囲碁のプロ試験に合格した大西研也君が、プロ棋士としての一歩を踏み出した。囲碁の魅力を「序盤は好きなように打てる自由性と、中盤以降はきちんと考えて打たなければいけない部分がある。奥が深い」と語る。

始めたきっかけは、小学1年の時に見たテレビアニメ『ヒカルの碁』。「おもしろそうだな」と感じ、祖父や近所の公民館で大人を相手に、ルールを覚えながら対局を重ねた。2年生からは毎週土曜日に、船橋市で子供たちに囲碁を教えている山下功先生の塾に通い始めたが、「当時から、ほかの子にはない何かを持っていた」と山下先生は振り返る。

4年生の時、少年少女囲碁大会全国大会で準優勝し、プロを目指す日本棋院の院生試験にも合格。週末の棋院通い、家での棋譜並べやネット碁で腕を磨いた。「週末は遊べないし、将来的な不安もあった。プロになる決心は、なかなかつかなかった」と話す大西君だが、囲碁を好きな思いは変わらなかった。やがて「プロで頑張ってみよう」という気持ちになっていく。

しかし、院生といえども、プロへの道は狭き門だ。年2回行われる試験でプロになれるのは最大3人。大西君も中学時代に2年続けて失敗した。院生でいられるのは高校2年までである。「次に合格できなかったらプロは諦めるつもりだった」という覚悟で臨んだ昨年11月の試験で、16人中トップの成績で悲願を達成した。「試験は独特の緊張感がある。合格できてとてもうれしかった」

今年度から東葉高校の通信制に転籍し、高校生とプロ棋士という二足のわらじを履く生活。大西君を、山下先生は「いろいろな手の可能性を早く見ることができるし、勝負強い」と評し、「プロの世界は厳しい。今までは才能でやってきた面も多いけれど、これからは今まで以上に努力をしてほしい」とエールを送る。

目標は3年前に最年少の20歳で名人となった井山裕太天元。「少しでも追いつけるようにしたい。そして、いつかは7大タイトルのどれかをとりたいです」。外見はあどけなさの残る高校2年生だが、こと囲碁に関しては、胸の奥で熱い闘志をみなぎらせている。大西君の夢は、無限に広がっている。 (小野哲史)

学校紹介
1925年設立。松井重久校長。生徒数602人。自ら学び、自分で自分を教育できる「自己教育力」育成が目標。