勉学や就業の制限、親ほど歳の離れた男性との結婚、望まない妊娠・出産――。女性というだけでさまざまな自由を奪われ、人間としての尊厳すらも見いだせない人たちが世界中で苦しんでいる。国連機関「国連人口基金(UNFPA)」の東京事務所長としてジェンダー平等の推進に取り組む佐藤摩利子さんに、世界の現状を高校生記者が聞いた。(聞き手=高校生記者・金子瑞実、澤田碧砂、吉田結菜)

佐藤さんに取材する高校生記者

未成熟な体で望まぬ出産

――世界の女性差別の現状について教えてください。

社会的に弱い立場にある女性は、世界中でさまざまな差別を受けています。特に開発途上国ではそれが顕著。「女の子は農作業などの役に立たない」という理由で出産後にネグレクト(育児放棄)されたり人身売買の対象とされたりします。「児童婚」も大きな問題です。

――児童婚とは?

経済的援助を受けるために、娘を歳の離れた男性のもとに嫁がせることです。途上国に住む女性のうち3人に1人が18歳以下、9人に1人が15歳以下で結婚しています。自宅に閉じ込められる、夫から暴力を振るわれるといった例が後を絶たず、学校に行くことも仕事に就くこともできなくなります。当然「子どもを産む、産まない」「いつ産む」といった家族計画の決定権はほぼありません。体が未成熟な状態で妊娠・出産するため、命を落としたり、後遺症に苦しんだりする人が多くいます。

――児童婚を免れた女の子は、学校に通えるのでしょうか?

結婚をしなくても、家事を手伝ったり、働かなくてはならなかったりといった理由で、学校に通えない女の子も多くいます。また、途上国には生理用品やトイレがないところも多い。月の4分の1程度は学校を休まざるを得なくなれば、当然男の子に後れを取りますよね。それがつらくてドロップアウトしてしまうのです。

――先進国でも女性差別はあるのでしょうか。

保育施設の不足などの理由により、妊娠出産を機に仕事をやめる、または制限せざるを得ない人が大勢います。子育てが終わったと思ったら次は夫や両親の介護が始まりますし、いまだ男性よりも活動を制限されているのです。他にもDV(家庭内暴力)やセクシュアルハラスメントなどは、日本をはじめとする先進国で課題に挙がっている女性差別の一例です。

迫害された女性を守る

――ジェンダーの平等を推進するため、どのようなことに取り組んでいますか?

日本政府とUNFPA本部の間に立ち、さまざまな活動を行っています。 

今年は、ミャンマー・バングラデシュのロヒンギャ難民の女性を守るセーフスペース作りに協力しました。ロヒンギャ難民はイスラム教徒であることなどを理由に迫害を受けており、米国国務省の調査によれば、インタビューをされた人々の実に半分以上が、兵士や治安部隊の男性から女性が性的暴力を受けている様子を目撃しているそうです。紛争下で戦火を免れ、彼女たちが安心して生活でき、たとえ望まぬ妊娠であっても尊厳を持って出産できる環境の整備にも協力しています。(文・写真 青木美帆)

セーフスペースで暮らすロヒンギャ難民の女性たち UNFPA/@LABCollaborate

★佐藤さんに聞いた高校生へのメッセージはこちらから

国連人口基金(UNFPA) 地球規模の人口問題に取り組む。特に政策づくりと実施の両面から、貧困削減や持続可能な開発、性と生殖に関する健康と権利の推進、女性の能力強化を通じた社会的地位の向上、国勢調査を含む研究調査などの支援活動などを行う。

さとう・まりこ 秋田市出身。短期大学卒業後、秋田市役所を経てアメリカの大学、大学院へ留学。1994年から国連ハビタットに勤務。2009年にはタイ・バンコク事務所を開設し、初代所長に就任。17年9月より現職。