国連機関「国連人口基金(UNFPA)」の東京事務所長としてジェンダー平等の推進に取り組む佐藤摩利子さんに、国連機関で働きたいと思う高校生にアドバイスをしてもらった。(聞き手・金子瑞実、澤田碧砂、吉田結菜)

佐藤さんにインタビューする高校生記者たち

意見言える力をつけよう

――国連機関で働くためにはどんな進路を選べばよいですか?

国連ではさまざまな国際問題を扱っています。英語のスキルは必須ですが、自分がどんな方面で活躍したいかによって必要とされる学力や能力も異なるので、まずは自分がやりたいことを明確にしつつ、国連のホームページの採用情報をチェックしてみてください。扱う領域や機関によっては資格や関連分野の学位、途上国での実務経験などが求められることがありますので、これを確認した上で進路を逆算してみるのがいいと思います。

――国連機関に勤務するようになったきっかけは?

私は幼少期から、父から「女に教育はいらない」と言われ続け、四年制大学進学の道を諦めざるを得ませんでした。その後も留学先や勤務先などで何度となく女性差別を実感する中で、たまたま国連が主に途上国の女性の権利を守る活動をしていることを知り、「これが私のライフワークだ」と思ったんです。その後、大学院で必要な学位を取り、NGO勤務を経て国連の採用試験を受けました。「国連で働きたい」ではなく「やりたいことをやるには、たまたま国連」というのが原点でした。

相手の意見、変える力を

――国連を始めとする国際機関で活躍するために必要な力は?

アメリカに留学し、飲食店でアルバイトをしていたときのことです。女性学を学んでいた私は、訪れた日本人ビジネスマンにジェンダーに関する主張を強くぶつけましたが、まったく取り合ってもらえませんでした。とても悔しい思いをしたのと同時に、正しいと思っていることをただ強く主張するだけでは、意見が違う人たちには伝わらないと学びました。

まずは自分の話を聞いてもらえる土壌や信頼関係を作ることが大事。しっかりとした戦略を立てて、じわじわと相手の意見を変えていく能力は、国益も文化も異なる国々が集まる国連においてもとても重要なスキルです。相手を負かすことではなく考え方を変えさせることが、差別撤廃の一歩にもつながるはずです。

――国連機関で働きたい高校生が今から意識してできることは?

「日本の常識は、必ずしも世界の常識でない」ということを知って行動してほしいと思います。私はアメリカに留学中、授業で聞いた通りの内容の試験答案を出したにもかかわらず、非常に低い評価を受けたことがあります。先生に理由を聞くと「あなたの意見がどこにもないから」と言われたんです。日本ではそうではないですよね。目上の人が言うことに従っているだけではグローバルでは活躍できないのです。例えば「おかしいな」と思ったことを友達と議論してみる、先生に対しても、分からないことがあれば納得がいくまで質問するという気持ちを大切にしてほしいです。(文・写真 青木美帆)

★佐藤さんに聞いた自由奪われる世界の女性の現状について聞いた記事はこちらから

取材を終えて…不平等の理不尽さに衝撃

 途上国でのジェンダーの不平等の理不尽さに衝撃を受けたと同時に、自分には何もできないというふがいなさを感じた。厳しい状況下にある同世代の女の子たちがいることを理解し、発信することが唯一できることであり、使命だと思う。自分の置かれている環境に常に感謝することを忘れずに、彼女たちの支援に少しでも貢献できるよう、活動しようと思った(澤田)

 「NATOにならず、したたかに。」この言葉が一番心に残った。NATOは「No Action, Talking Only」の略で「口先だけの人間になるのではなく、行動を起こしなさい」ということだ。また、女性が今後の社会で生きていくうえで「したたかに動く」とアドバイスをいただいた。私は模擬国連をやっているので、今後の模擬会議の時に行う交渉の時に実践してみたいと思った。(吉田)

 ジェンダーの不平等をなくすために、男尊女卑的な考えを持つ男性に対してあえて女性らしく振る舞い、聞く耳を持ってもらうという戦略を知った。初めは女性が自身の地位をわざと下げることにつながるのではないかと思ったが、佐藤さんと意見を交わすことで、最終目的である「男性が女性の考えに耳を傾けるという変化」に達することが過程よりも重要だと分かった。(金子)

佐藤さん(左から2人目)と高校生記者たち