坂下純也主将を中心に「応援されるチーム」を目指す

インターハイのバレーボール男子で優勝候補の呼び声が高い駿台学園(東京)。中学時代に全国制覇を経験した選手がそろい、プレーの質は高い。だが、6月の東京都予選では「打倒駿台」に燃える東亜学園に敗れ、まさかの第2代表に。悔しさをバネに、全国大会初優勝へ向け、厳しい練習に取り組んでいる。(文・田中夕子 写真・幡原裕治)

疲れた時こそ声を出す

体育館をいっぱいに使って、あちらこちらへ飛んでいくボールをレシーブしようと、くらいつく。

「自分が(ボールに)触らない時は周りに向かって指示を出すんだろう? 自分のことだけで目いっぱいになるな!」

ボールを打つ梅川大介監督の指導に熱が入り、周りの選手も「頑張れ」「行け!」「上だよ、上!」など声を掛ける。練習が始まって、まだ30分余りだが、レシーブ練習はどんどん厳しさを増していく。1時間以上にも及んだレシーブ練習を終えると、休む間もなくスパイク練習。声を出すのも体力がいるが、副主将のリベロ、土岐大陽(3年)は「試合では、バタバタしていると穴が出る。大事な場面でそうならないように、練習の時、疲れた時こそ声を出さなければならないと思ってやっている」と言う。

全国行脚で大きく飛躍

チームはこれまで、関東周辺の学校と練習試合をすることが多かったが、昨年からは東海や関西、九州などさまざまな全国の強豪と積極的に手合わせするようになった。関東の高校のバレーボールは、大型のエースが打ってブロックとレシーブを固める、さほど複雑ではないスタイルが主流だ。しかし、九州のチームは、速いトスから何人もの選手が同時に攻撃を展開するコンビバレーを武器とするため、九州勢との戦いを不得手とする関東のチームは少なくない。そんな苦手を克服するために組まれた遠征は選手にも好評で、チームの得点源、村山豪(3年)は「ビデオで見て研究するのと、実際に対戦するのでは得られる感覚が全く違う。ブロックの練習にもなるのでプラスになる」と話す。

成果を感じているのは村山個人に限らない。チームは昨年度、インターハイ準優勝、全日本高校選手権(春高バレー)3位と常に上位をキープするなど、飛躍のきっかけとなった。

プレッシャーを力に

中学時代に全国制覇を経験するなど、キャリアが豊富で、技術レベルも高い選手がそろう一方、「劣勢になると、チームがバラバラになってしまう」(土岐)のも弱点。都予選で東亜学園に敗れた試合は、まさにその悪い面が出てしまった。

主将の坂下純也(3年)は言う。「崩れるとお互いの顔を見る余裕がなくなり、チームの和がなくなってしまう。周りから『優勝候補』と思われるような位置にいるのは確かだと思うし、だからこそ、チームワークをもっと高めて、見る人から『こんなチームになりたい』と思われるようになりたいです」

今年で就任3年目を迎えた梅川監督が重きを置くのも、「個」ではない。「組織力」を高めるために、選手同士でコミュニケーションを図ること、基礎を大切にすること、そしてバレーボールを学び、自分で考えられる選手になることだ。

「中学で全国優勝できたからといって、高校でも勝てるほど甘い世界ではありません。ここからどれだけ本気になれるか。意地とプライドを出せるか。壁を破るためには、それらが不可欠です」

都予選で敗れた悔しさも糧にして、間もなく迎えるインターハイで目指すは頂点だけだ。優勝候補と呼ばれることにプレッシャーがないわけではない。だが、プレッシャーも力に変えることができれば、もっと強いチームになれることを、誰よりも選手たち自身が理解している。

チームの得点源の村山豪(3年)は「120%の力で粘り強いバレーを展開したい」と決意を語り、土岐は「自分たちのやるべきバレーをして、他を圧倒して日本一になりたい」と力強く宣言した。

 
【TEAM DATA】駿台学園男子バレーボール部
1963年創部。部員30人(3年生11人、2年生7人、1年生12人)。バレーボールを校技と位置付け、年に1度、全校でのクラス対抗バレーボール大会が開催される。高校バレー界の東の名門の1つで、Vリーグや関東大学リーグにも卒業生を多く輩出している。