1月4日から8日にかけて、東京体育館(東京)で開催された第70回全日本バレーボール高校選手権(春高バレー)。男子は鎮西(熊本)が優勝した。準決勝、決勝でにとりわけ輝いた選手を6人紹介する。(文・田中夕子、写真・中村博之)

鍬田憲伸 冴え渡る得意のバックアタック

鍬田憲伸(くわだ・けんしん=鎮西3年)

攻撃力に長けたエースとして、1年時から試合出場を重ねたが、長く課題とされてきたのが精神面の脆さ。畑野久雄監督も事あるごとに「誰よりも鍬田を怒ってきた」と言うように、エースとして主将としてたくましさが求められ続けた3年間だった。
 だが最後の春高で持ち前の攻撃力だけでなく、チームを勝利に導くエースとしての才能も開花。1セットを先取された初戦や、決勝戦では、ここぞという場面で鍬田のスパイクが炸裂。得意とするバックアタックが冴え渡った。
 U18、U20日本代表候補にも選出されており、国際経験を重ねることでさらなる成長も期待される選手の1人。ようやくつかんだ春高王者の称号を手に「家族や先生、支えてくれる人たちがいるからこれからもバレーができる。感謝の気持ちを持ち続けて頑張りたい」と将来を見据えた。

鍬田憲伸(くわだ・けんしん=鎮西3年)

水町泰杜 抜群の跳躍力 巧みなテクニックを披露

水町泰杜(みずまち・たいと=鎮西1年) 

中学時代から全国優勝を経験。畑野久雄監督は「高校1年生レベルをはるかに超えた選手」と絶賛するスーパー1年生。180センチと身長こそ高くはないが、抜群の跳躍力や相手ブロッカーやレシーバーを見て攻撃に変化を加える巧みなテクニックを擁する。
 明るい性格で、2つ先輩の鍬田に対しても「上下関係は全くないので楽しく接している」と言うが、内に秘める思いは熱く「あまり口にはしないけれど、心の中では『俺が決めてやる』という気持ちもある」と語る。優勝メンバーの鍬田ら3年生が抜け、来年からはエースとしての活躍も期待されているだけでなく、U18日本代表候補にも名を連ね、活躍の場はさらに広がりそうだ。「将来は(日本代表で東レアローズの)米山裕太選手のように、小さくても世界で戦えるような守備も攻撃もできる選手になりたい」と目を輝かせる水町に注目だ。

水町泰杜(みずまち・たいと=鎮西1年) 

大塚達宣 バックアタックで存在感発揮

大塚達宣(おおつか・たつのり=洛南2年) 

昨年は1年生エースとして初出場。センターコートを前に敗れたが、2年目の今季はさらにたくましさを増したエースとしてチームを牽引し、準優勝へと導いた。同世代の中でも攻撃力の高さは非凡な才能を持つが、特に光るのはバックアタック。U18日本代表候補合宿の中で「世界を相手にするためには、ただ思い切り打つだけでなくスピードも大事だと学んだ」と言うように、春高でもさまざまな場所からのバックアタックが効果を発した。
 1年時は「とにかく思い切りプレーすることしか考えていなかった」と言うが、春高や世界を見据えた代表チームでの経験がプレーや考え方にも新たな幅を加えた。「高校生の中では自分も高いほうだけれど世界では小さい。そこでも得点を取れるように、ひと工夫加えたプレーができるようになってきた」と言うように、将来性も抜群。ここからどれだけ進化を遂げるのか。楽しみな逸材だ。

大塚達宣(おおつか・たつのり=洛南2年) 

山本龍 頭脳派で攻撃的なセッター

山本龍(やまもと・りゅう=洛南2年)

多彩なアタッカー陣を生かす、頭脳派かつ攻撃的なセッター。得点を取るために今はここに上げればいい、というトスワークには迷いがなく、多少サーブレシーブやパスが乱れても積極的にミドルやバックアタックも絡め、相手のディフェンスを翻弄する。自身では「上げればどんなトスでも打ってくれるアタッカーがいるから心強い」と謙遜するが、自分本位のトスではなくアタッカーを生かすトスが上げられるのも山本の強みだ。
 春高前に左手の人差し指を骨折し「大会が始まる直前まで不安があった」と言うが、試合を重ねるごとにチームとしての攻撃力に磨きがかかり、堂々の準優勝。「普通ならば打てないだろうなという状況でも打ち切って、決めてくれるアタッカーが揃っているので、良さが生かせるような面白いバレーがしたい」と目を輝かせた。

山本龍(やまもと・りゅう=洛南2年)

小田島拓也 劣勢時にチームを鼓舞

小田島拓也(おだじま・たくや=東亜学園3年)

2年生だった昨季は決勝進出。東京勢同士の対戦となった駿台学園との頂上決戦に敗れ、悔し涙を流したが、その直後から「自分たちにはあの悔しさを晴らすチャンスがある」と厳しい練習にも積極的に取り組んできた。エースとして自身のスパイクで得点を重ねることだけでなく、劣勢時やチームが沈みがちな時にはゲームキャプテンとしてコート内を鼓舞し、声をかける。そんな姿勢を佐藤俊博監督も「小田島が崩れたら終わり、というほどの全体的な信頼がある」と高く評価する。
 決して恵まれた体躯ではないが、ブロッカーのタイミングをずらすような攻撃の入り方をして見せ、勝負所ではサーブや強打で一気に畳みかける抜群の勝負勘も持つ。最後の春高で全国制覇を成し遂げることはできなかったが、晴れやかな表情で「佐藤先生を胴上げすることができなくて悔しいけれど、3年間、楽しかった」と胸を張った。

小田島拓也(おだじま・たくや=東亜学園3年)

持田恒希 相手の守備を崩すサーブが光る

持田恒希(もちだ・こうき=高川学園2年) 

昨年に続いて準決勝進出。優勝した鎮西に敗れ、決勝進出には届かなかったが、王者に対しても堂々と攻め続ける思い切りのよいプレーが光った。中でも2年生トリオとして活躍したのがエースの持田。高さで上回る鎮西のブロックに対しても果敢に攻め込み、ブロックを弾き飛ばすスパイクで次々に得点を重ねた。
 さらに光ったのはサーブだ。鎮西が先行し、終始リードする状況でも思い切り打ち切るサーブで相手の守備を崩し、返って来たチャンスボールは自らバックアタックで決める。頼れるエースに有吉健二監督も「いろいろな経験をして成長した」と称賛。決勝進出を果たすことはできず、2年連続の悔しさを味わうこととなったが、まだまだ伸び盛り。「自分の中では落ち着いてプレーすることができた」という2年生エースの成長に期待したい。

持田恒希(もちだ・こうき=高川学園2年)