12月23日から28日にかけて、東京体育館(東京)で開催された全国高校バスケットボール選手権大会(ウインターカップ)女子。28日の決勝戦は大阪桐蔭(大阪)が再延長の末に安城学園(愛知)を86-84で下し、初優勝を飾った。(文・青木美帆、写真・幡原裕治)

エースの退場のピンチ 連続得点で逆転

大ピンチだった。準々決勝で29得点、準決勝で35得点を稼いだエースセンターの竹原レイラ(3年)が安城学園の好守に阻まれてボールを持てず、第3ピリオドで最大12点のビハインドを負った。

竹原頼みのオフェンスは、今年のチームの大きな課題。かつてのチームなら、この時点で勝負があったかもしれない。しかし、鈴木妃乃(3年)の3ポイントと永井唯菜(3年)のリバウンドを軸に点差を詰め、第4ピリオド残り1分で同点に。再延長戦残り2分半、2点ビハインドという場面で竹原が退場するというピンチにも「不安になってしまったら勝てない。コートの5人を信じて戦おう」(永井)と気持ちを高め、鈴木の連続得点で再び逆転。2点のリードを粘り強く守り抜き、試合終了の瞬間までゴールに走り込んだ。

鈴木の連続得点で逆転した

 

 

 

 

 

 

 

 

「バスケは全員でやるもの」気持ちの弱さ克服

 キャプテンの永田舞(3年)は「これまでは強い相手と戦うと気持ちで負けて、逃げ腰になってしまっていた」と振り返る。インターハイの準決勝と国体の準決勝で、ともに優勝した岐阜女に惨敗。悔しい負けを経験したことで、チームの意識が変わった。先発した5人全員が課題に挙げた「気持ちの弱さ」を克服するために、コートに立った人間がしっかり声を出し続けることを徹底した。

チームを引っ張ったキャプテンの永田(右)

森田久鶴コーチは「竹原を支えてくれたまわりの3年生の力が勝因」とコメントし、ベンチから祈るように試合を見つめていた竹原も、「一人ひとりがリングに向かう気持ちが強かった。みんなの気持ちが見えるプレーでした」と仲間たちの奮闘ぶりを喜んだ。

苦しい展開でも怯えることなく、強気に戦い抜いた結果が初めての優勝につながった。悔しい思いが残る竹原も、「ここまでみんなで一緒にやってこられてよかった。高校バスケは誰かの力でなく全員でやるものだと思いました」と自らの高校3年間を総括した。

【チームデータ】
2010年創部。主な卒業生に西岡里紗(三菱電機)。部員の多くは寮生活を送り、来客の際には抹茶をたてる習慣がある。永井の父は今大会指揮をとった永井雅彦アシスタントコーチ。硬式野球部、吹奏楽部も全国屈指の実力を誇る。