1つひとつの突き、蹴りにすべてを込める石橋

2020年東京五輪の正式競技に採用された空手。石橋咲織(神奈川・横浜創学館3年)は、1人で演武する「形」競技で将来を期待される。今年行われた全国高校選抜大会、全国高校総体(インターハイ)、国体を制覇し3冠を達成。観衆を魅了するような演武を目指し、鍛錬を重ねてきたという。大会前のけがに負けず、空手に打ち込んだ日々を振り返ってもらった。(文・写真 茂野聡士)

大会直前の負傷乗り越え

ナショナルチームに名を連ねた小学6年生のころから有望株として知られ、「(高校1年から)いつ優勝してもおかしくない実力を持っていた」(空手道部顧問の栗原千秋先生)。しかし、本人の言う「なかなか自信を持てない性格」が本番で影響し、国内では優勝にあと一歩届かない成績が続いていた。

苦難も待ち構えていた。今年3月の選抜大会前に足を骨折。8月のインターハイの1カ月前には、左太もも裏の肉離れを発症。医者から「出場を取りやめた方がいい」と言われた。それでも大会直前に出場を決断して優勝。その勢いに乗って10月の国体も制した。

緊張ほぐすストレッチ

苦境でも自らの演技を出し切れたのは、試合直前の「ルーティン」にある。特に緊張しやすい初戦の前には、肩の力を抜くようなストレッチに必ず取り組んだ。メンタル面の対策として、自分を鼓舞するようにもした。「コートに入る前に『自分は観客の皆さんに〝魅せる〟ような形をやるんだ!』と口にするようにしました」

部活での練習は1日3時間。ランニングや体幹トレーニングも欠かさない。「美しい形を、本番で見てもらいたい」。その心持ちが、本番で緊張することなく本来の良さを見せる演技につながった。

東京五輪目指す

高校生世代での3冠を成し遂げた石橋だが、見据える地点は高い。国際大会を経験するたびに「外国人は、体が大きくて自信満々な選手が多い」と感じるとともに、「会場が大きく、歓声が沸き上がることが多いので、のまれないようにしたい」と、自身と国際レベルとの差を認識している。その差を埋めるために、しなやかさと力強さを磨き上げ、確実に経験値を積み上げている。「3年後の東京五輪を目指したい」

 

いしばし・さおり 1999年8月25日、神奈川県出身。空手との出会いは5歳のころ、「兄がやっていて楽しそうだったので始めた」。平塚・大野中卒。2016年11月、第15回アジアジュニア&カデットU21世界選手権のジュニア女子個人形で優勝。

Q&A

誕生日にはコーン缶詰

─オフの日は何をしていますか?

部活がないのは月曜日ですが、空手道場に通って練習しているので、オフとは言わないかもしれませんね(笑)。

─好きな食べ物は?

トウモロコシです! 誕生日にコーンの缶詰を9缶もらって、全部食べました。

─好きな教科は?

英語、日本史です。特に英語は国際試合で遠征する際に必要な語学なので、しっかりと勉強しています。