「偉大な感性を持つ」評価

文学賞は「日の名残り」「わたしを離さないで」などで知られる長崎市生まれの英国人小説家カズオ・イシグロ氏(63)に授与される。日本出身の作家としては1968年の川端康成、94年の大江健三郎氏に次ぎ3人目、23年ぶりの受賞となる。

「偉大な感性を持った小説によって、世界とつながっているという幻想に潜んだ深淵(しんえん)を明らかにした」が授賞理由。事前にイシグロ氏の名前を予想受賞者の上位に挙げていた有力メディアはなく、昨年の米歌手ボブ・ディラン氏に続いての〝サプライズ〟となった。

「私の一部は日本人」

記者会見したイシグロ氏は「私の世界観には日本が影響している。私の一部は、いつも日本人と思っていた」と語った。授賞決定は電話で知らされたといい「冗談かと思った。フェイクニュースがはやっているからね」とおどける場面も。

1954年11月8日、長崎市で生まれ、5歳で両親と渡英。英国の大学、大学院で学び20代で英国籍を取得した。日本語は平仮名が読めるが、会話はほとんどできないとされる。

綾瀬はるかさん主演ドラマにも

82年に、戦後の長崎を舞台にした最初の長編小説「遠い山なみの光」を発表し、脚光を浴びた。失われた伝統的な英国を描いた「日の名残り」(89年)が英文学賞の最高峰であるブッカー賞を受賞、後にアンソニー・ホプキンスさん主演で映画化された。

臓器移植のクローンとして生み出された若者たちの物語「わたしを離さないで」(2005年)は故・蜷川幸雄さん演出の舞台や、綾瀬はるかさん主演のテレビドラマになった。

ノーベル賞を受賞した日本人と日本出身者はイシグロ氏を加えると26人となる。

カズオ・イシグロ氏語録

▼「私にとっての日本は子ども時代の記憶による想像の国だった」(1989年、来日時の記者会見)

▼「人々が共有できる感情や感動を伝えることが、私の小説家としての仕事だと思います」(2011年、インタビュー)

▼「私の作品は、人間がいつ過去を記憶したらいいのか、いつ過去を忘れたらいいのかという問いに葛藤する物語です」(15年、インタビュー)

▼「最初に小説を書き始めた際の動機は、私の日本の記憶を保存することにありました」(15年、インタビュー)