タイのコナングッズを手に持つ片桐さん。背景は青山剛晶さん直筆のイラスト

日本の漫画やアニメは「クールジャパン」と評され、海外でも人気がある。ポケモンやドラえもんといった多くのキャラクタービジネスなどを手掛ける会社「小学館集英社プロダクション」で、アジアを中心に海外展開する仕事に関わっているのが片桐正貴さんだ。仕事の面白さや難しさ、そしてやりがいを聞いた。(文・写真 斉藤健仁)

海外にグッズ売り込む

──仕事内容を教えてください。

日本の漫画やアニメの商品化の権利を管理し、企画・販売にも関わっています。海外の会社と一緒にグッズを作って海外で売ったり、日本で作られたグッズをそのまま輸出したりします。

──日本の漫画やアニメは海外で人気があると聞きますが、現状は。

海外では、たくさんの作品がテレビで放映されています。ですが10年前と違って、日本の漫画やアニメの商品をそのまま海外に持って行けば売れる時代ではなくなりました。

──海外展開のために必要なことは。

 文化や習慣、経済事情などが違うので、何が人気か、多面的に現地の事情を知り、それに合わせることが重要です。ただ、キャラクターそのものは変えるわけにはいきません。感覚の違いを受け入れる寛容さを持ちつつ、「ここは譲れない」という点はしっかりと伝えて、お互いが納得できるところを見いだしていこうとします。

韓国で名探偵コナン展

──具体的には。

例えば、今夏、韓国のソウルで現地の方と協力して「名探偵コナン展」を開きました。作者・青山剛昌さんの原画レプリカ展示や劇中に登場する「毛利探偵事務所」の再現、グッズの販売などを行いました。韓国のファンに漫画やテレビ、映画以外の手法で、コナンの世界を紹介し、魅力を伝えられたと思っています。

──日本との違いは。

名探偵コナンは韓国でも人気ですが、日本だとコアなファンが多く、作品に登場する毒薬「アポトキシン」と同じ赤い色をしたカレーなど、個性的な商品が好まれます。韓国では、日本と比べ商品化のバリエーションが乏しいため、オーソドックスなピンバッジやステッカーなど、シンプルなグッズがよく売れていました。

英語も世界史も役立つ

──やりがいは。

時代が変化する中で、どうすれば海外で日本の漫画やアニメのグッズが受け入れられるのか、新しいことを仕掛ける面白さを感じています。今までとは違うやり方で進めたり、見方そのものを変えたりしたらできる可能性があるのでは、と考えて仕事をしています。

──将来、海外で仕事をしたい高校生にメッセージをお願いします。

海外の文化や事情を知ることが大切です。高校生の時に学んだ世界史の知識などを生かせることがあります。大学時代に法学部で学んだ知識は、契約書を読んだり、書いたりするときに役立っています。海外の方とビジネスをするために英語などの習得も欠かせないので、受験勉強が終わって大学に入っても語学の勉強は続けてほしいですね!

韓国で行われた名探偵コナン展のブース

 片桐さんのある一日(出張先のインドネシアで)

7:00
起床
9:00
メールチェック
10:00
現地のショッピングモール視察
11:00
現地の人と商談
12:00
ランチをしながら現地の会社の人と商談
14:00
現地の大手スーパーの人と商談
17:00
日本法人や日本の商社の現地駐在スタッフと商談
19:00
ディナーをしながら現地の広告代理店の人と商談
22:00
今後の事業プランと報告書作成
【かたぎり・まさたか】
1977年生まれ。東京・本郷高校出身。獨協大学法学部卒業。映画制作・配給会社、商社を経て、現職。