主演作が相次ぐ実力派俳優の高良健吾さん。最新作の映画「きみはいい子」では、初の教師役に挑戦し、演技の幅を広げた。今の活躍ぶりからは想像できないが、高校入学当初は、何をするにも無気力な生徒だったという。「自分を大きく変えたのが俳優の仕事だった」と振り返る。
(文・中田宗孝、写真・宮城寛明)

教師になりきる

「きみはいい子」では、小学校教師・岡野匡(ただし)を演じた。

「(役作りは)まずは自分がカメラの前で岡野先生を演じてみせる。すると監督から『歩く速度をちょっと遅く』など、どこか感覚的な助言をもらい、実践する。映像で確認すると、監督の指示が的確だと分かるんです」
 
 完成したのは、人知れず悩みを抱える大人と子どもを描いた群像劇。「脚本以上の作品になった」と、自信をのぞかせる。

高校2年生の転機

高校生になってしばらくは「いつもダルそうな生徒だった」と苦笑する。だが、2年生から芸能活動を始めたことで、自分の中に大きな変化が訪れた。

「地元の熊本と東京を行き来しながら仕事をしてみて、地元が好き、学校が大好きな自分に気が付いたんです。地元の友人には本当に助けられてきた。それからは、友人たちと過ごせる学校生活の一日一日を大事にしながら卒業したいと思い直しました」
 
 高校生活を楽しもうという自分を、先生たちも後押ししてくれた。「僕の高校の先生方は、普段の時も授業の時も、ユーモアを忘れず、生徒以上に学校を満喫していました(笑)。『大人になっても人生楽しいんだぜ!』と、思わせてくれる大人が近くにいてくれて心強かったです」

恥ずかしい思いをしていい

高校生には「どんどん失敗するべき」とアドバイスする。
 
 「失敗には、次につながる、強くなれる、といった『いい失敗』もあるんです。確かに、失敗すると恥ずかしい思いもします。僕も高校時代は失敗だらけ。監督から『恥知らず』と言われたこともあります。でも、高校生の時にいっぱい恥ずかしい思いをしておいた方がいいんです。何もせずに諦めたり、変に大人ぶったりしたら、もったいない。自分の思いを行動に移してカタチにしていってください」

こうら・けんご 1987年11月12日、熊本県生まれ。2005年に俳優デビュー。主な出演作は映画「蛇にピアス」「軽蔑」「横道世之介」など。NHK大河ドラマ「花燃ゆ」に出演中。2015年は主演映画「悼む人」が公開。「熊本市わくわく親善大使」を務める。

「きみはいい子」  
 新米小学校教師の岡野(高良健吾)は、担任するクラスで次々と起こる問題に対処できずに悩むが、同じ街に住む、さまざまな迷いを抱えた人々との出会いや気付きから、一歩を踏み出そうとする。6月27日から全国公開。配給:アークエンタテインメント。