大分県立鶴崎工業高校では、県内の女子高校生で初となる建築大工技能士2級合格者を出し、「高校生ものづくりコンテスト」や部活でも頑張っている。目標は「本物になろう!」だ。 (文・写真 南隆洋)

女子では県内初、建築大工技能士2級合格 佐藤鈴香さんの夢は現場監督!

鶴崎工業高校建築科3年、佐藤鈴香さんは2年生の終わりに国家資格の建築大工技能士2級に合格した。男子を含め県内高校生では3人目で、女子では初の快挙だ。試験は学科と実技。実技では6時間半以内に、屋根の一部の展開図を作り、木材に墨付けして加工組み立てを完了させる。「節のある木を見て、どこに墨付けして切るか。判断力と正確さを求められ、男子でも難しい」と担任の竹永晃先生。

30種もの工具を巧みに操り、木を形にしていく。が、ここまで来るのは決して平たんな道のりではなかった。佐藤さんは左利き。大工用具は大半が右利き仕様なので、先輩たちが左利き用墨刺し(印をつけるへら)などを作ってくれた。

身長156㌢、体重55㌔。小柄な体にかんながけはきつかった。ノミやドリルの歯を何本も折った。ズボンは、刃であちこちが裂けた。「負けられない」と、学校から帰ると、働く母を支えるために家事を手伝う傍ら、河原を1、2㌔走って体力をつけた。「昨日より上手になろう。早くできるようになりたい」と。小学校の耐震工事現場で職場体験をした時、監督と職人たちが言葉を交わし、信頼し助け合って仕事に取り組む姿に感激した。

「私もこんな中にいたい」と目標を「現場監督」に決めた。「施工管理」の資格試験に向かって、さらに勉強を続けている。

「きちょうめんで仕事がきれい。気配りして周りがよく見えている」と、竹永先生は「女性監督」誕生に期待をかけている。

本物になろう!をキャッチフレーズにものづくりの技を磨く

鶴崎工業高校は昨年の「高校生ものづくりコンテスト」県大会で、出場した6部門のうち5部門(旋盤作業、自動車整備、電気工事、電子回路組立、木材加工)で最優秀賞を獲得。このうち、電気工事と電子回路組立はいずれも6連覇、木材加工は4連覇。九州、全国大会でも旋盤作業や電子回路組立で上位入賞の輝かしい実績を上げている。

同校には「工業部」があり、機械、電気、建築、工業化学、デザインの5つの部が放課後、顧問教師の指導のもと活動している。電気部競技ロボット班は2005年の結成以来、昨年まで7年連続で県代表として全国高校ロボット競技大会に出場。06年には準優勝という快挙を成し遂げた。ロボット名は結成以来「姫九六位」。校歌に歌われている地域のシンボルの山の名で、現在16号。「もっと軽く、もっとスムーズに」と、設計・操縦担当の相馬伸太郎君(3年)を中心に、テストを重ね改良を加えている。毎年、大会のテーマが変わる中で「全国制覇するまで名前は変えない約束になっている」(3年、松岡浩輝キャプテン)と、目標の「日本一」へ向けてエンジニア魂を燃やしている。

資格取得や技術向上に意欲のある生徒たちは、存分に材料を与えられ、機械や用具を自在に扱いながらレベルを高めていけるシステムが整えられている。

「生徒にとって、ここがスタート。生徒を無視せず、とことん指導していく。先輩を見て後輩が育つ。そして、自分で考え、モノを作り出せる人間に鍛えられていく。卒業生の多くは地元に残り、地域を支えている」と安松良一校長。「本物になろう!」をキャッチフレーズに、師弟同行でマイスターへの旅が続いている。