東京工業大学附属科学技術高校(東京)の科学部は専門的な研究に励む一方、多くの人に科学の魅力を伝える活動を行っている。近年は小惑星探査機「はやぶさ2」を題材にした数々のプロジェクトを展開する。その一つが、はやぶさ2の行程やミッション内容を学べる「スゴロク」製作だ。

独自の「スゴロク」製作

「スゴロク・はやぶさ2」。略して「スゴはや2」は、2017年、当時1年生部員だった部長の白仁田耕介君と洞口翼君(ともに現3年)が約2カ月で完成させた。「スゴロクで遊びながら、はやぶさ2の旅の行程はもちろん、いつ、何をしたのかが時系列で分かるようになっています」(白仁田君)。公式サイトを参照して、スゴロク内にはやぶさ2の科学的・技術的な要素を正確に盛り込むことにも気を配った。

かぶっている「はやぶさ2帽子」も部員が作った

「スイングバイ」を表現

例えば、「地球スイングバイ」の升目を作った。地球スイングバイとは、はやぶさ2が小惑星リュウグウに向かうために地球の引力を利用して方向調整や加速をするミッションのこと。この升にたどり着くと、すぐにもう一度サイコロを振り、出た目によって早く進めるルート、遠回りをしなければならないルートの二手に分岐する。「駒を早く進めたり、遠回りさせたりすることで、『地球スイングバイ』が成功した際の『スピードアップ』と『方向調整』を知ることができるんです」(久保公貴君・2年)

はやぶさ2が実際に行うミッションの難しさと、スゴロク内の「ミッションマス」での難易度を巧みにリンクさせ、はやぶさ2の技術面のすごさを楽しみながら分かるように工夫した。

「はやぶさ2」のサンプリング体験装置

外国人向けや子ども向けも

「スゴはや2」は、はやぶさ2が最新ミッションを行うたびに、その内容をスゴロクに加えている。外国人向けの「英語版」など、新バージョンを次々製作。平仮名を多用した「シンプル版」で遊んだ子どもたちからは「はやぶさ2の目的が分かった」「好きになった」との声をもらった。白仁田君は、「次は子どもたちと一緒に『スゴはや2』を作るワークショップを計画中なんです」とほほ笑む。

(文・写真 中田宗孝)