図面を書き写す新君。環境化学科では図面を引く教科がないため 初めての経験だが、「なかなか上手ですよ」と吉田さん。

多摩工業高校は地元企業と連携し、希望する生徒が企業に出向い て実習を受ける「デュアルシステム」(長期就業訓練)を導入している 。今年度チャレンジしている生徒のうち2人に密着した。(文・写真 山口佳子)

企業の社員からじっくり学ぶ

5月13日、(株)早川ダット工場(日野市)の静かなオフィスの一角で 、井上龍太郎君(2年)と新利一門君(2年)は製図台に向き合い、 図面を書き写していた。「最近では設計もほとんどパソコンで行うけ れど、図面の大切さや線の種類を覚えるためにも手で書くことは大 切なんだよ」と、設計部の吉田仁さんが説明する。
 同社は、大手自動車メーカーのエンジンの基本となる型の図面を起 こし鋳造する。井上君と新君は就業訓練のため、2年生の1年間、 週に一度のペースで同社に通う予定だ。「出勤」する日は、朝から 夕方まで社員と同じ時間帯に働く。

訓練先の企業に就職も可

同校のデュアルシステムは、2年生が対象。希望制で、3年生の受 講も可能。単位として認められる。「短期間のインターンシップより、 生徒も企業もお互いのことがよくわかるようです」と、日敷全良先生 。今年3月に卒業したデュアルシステム1期生15人のうち2人は訓 練先の企業を希望し、就職した。
 同校では1年時の9月にデュアルシステムを希望する生徒を募り、 11月には候補企業を見学する。「社員の方たちが優しかったので、 この会社に決めました」と新君は言う。
 昨年1月には2日間の事前研修も行い、会社全体の業務も見せて もらった。井上君は、「流れ作業をイメージしていたのですが、技術者の集まりだということを 知って、スゴイと思いました」と振り返る。「尊敬できる先輩たちと仕 事ができてうれしい。1年間がんばって、就職もできたらいいなと思 っています」と、これからの就業訓練にも意欲をみせた。

デュアルシステムとは

企業での実践的な就業訓練と学校での実習を組み合わせた職業 教育システム。インターンシップよりも長い期間で就業訓練を行うこ とで、企業が必要とする実践的な技能や技術を身に付け、職業観 や勤労観を育む。卒業後に就業訓練を行った企業に就職することも 可能。東京都では現在5校が導入している。

鋳造で使用する砂型について説明を受ける二人