10月に創立90周年を迎える大阪市立泉尾工業高校は繊維工業科、色染工業科を有する化学系の工業高校として大阪の繊維産業を支えてきた。しかし、産業構造の変化に伴い、将来、ファッション業界でより活躍できる専門知識と技術を身につけるため、ファッション工学科として再編。さらに昨年12月には上田安子服飾専門学校、大阪文化服装学院の2校と提携してデザインや縫製などの指導を強化。ものづくりの技術を持ちながら、作り上げた布を洋服などの作品にするなど、ファッション業界に貢献できる人材を育てることをめざしている。

捺染という染色の実習では、デッサンから起こした下絵を専用の用紙に写してカッターで切り抜き、スクリーンに貼って型を作り、それを生地の上に置いて染料で着色するという一連の工程を1人で行う。また、織物の実習で使う綿糸や生糸も自分たちで染める。「型のデザインは柄の角度やバランスが難しい」「2種類の黄色を混ぜ合わせて別の黄色を作っていますが、なかなか思うような色が出ない」と実習は悪戦苦闘の連続だが、高田阿祐さん(2年)は「今までやったことがないので新鮮」と楽しみ、ファッションデザイナーになるのが小学生からの夢だという阪尾愛美さん(2年)は「デザインの基礎を学んでいるという実感がある」と充実感を得ている。

ファッション業界で必要とされる技能や専門知識を3年間かけて学習し、習得できる高校は大阪では唯一。全国的にもあまりないが、「ものづくりの工程を一から学ぶからこそ、素材の特徴を深く知ることができ、素材を生かすデザインのセンス、表現力を身に付けることができる」と高井一男科長は、工業高校でファッションを学ぶ意義を強調している。(文・写真 木和田志乃)