運動が苦手な人にとって、体育の授業は憂うつな時間です。臨床心理士でスクールカウンセラーの大倉智徳さんに、読者の高校生からLINE公式アカウント「高校生新聞編集部」に寄せられた「体育の授業が怖い」という悩みに答えてもらいました。

【お悩み】体育の授業が怖い

自分は運動がすごく苦手です。体育の授業では、個人競技なら周りの人に迷惑もかけないので気が楽です。でも、チームの競技だと、自分があまりにもできなさすぎて「同じチームの人から陰で悪口を言われているんじゃないか」と、とても不安になってしまいます。

怖くて、体育の授業の前日には寝られないことが度々あります。どうすれば不安にならずに済みますか?(おとうふ・高校1年男子)

体育の授業が怖くて寝られない

体育は「勝負」が目的じゃないけれど…

体育の授業は、スポーツに親しむ、健康に過ごすための知識や技術を身につけるのが目的です。しかし、いざ試合になると勝ち負けを過度に気にする人がいるので、運動が苦手な人にとってはつらい時間ですよね。

おとうふさんが「陰で悪口を言われているんじゃないか」と考えてしまうのもうなずけます。では、そんな場面があるときは、どうすればいいのでしょうか。

「他者からの見られ方」がストレスに

おとうふさんは他者からどう見られているか気になり、強いストレスを感じている状態にあると思います。集団生活をする中で、自分の中に「うまくいっていない」と感じるものがあると、生じやすい心理です。友達とうまく話せない、勉強がよく分からないなどと感じていても、同じ心理状態になるでしょう。

「悪口を言われているかも…」がストレスの原因に

運動が苦手なこととは別に、「悪口を言われるかも」という不安が前日の睡眠に影響していたり、もしかすると試合でうまく動けない状態を作っていたりするかもしれません。

プレーが上手な人に話しかけてみて

対人関係の中で、人がより強いストレスを感じるのは、「もしかして〇〇ではないか」と、周りがどう思っているのか分からない状況だと思います。そう考えると、なるべくチームメイトとのコミュニケーションを取っておくのが、心理面でもプラスになるのではないでしょうか。

プレーが上手な人に「君、うまいよね。どうやってやるの?」など声をかけてみたり、一緒に練習してみたりしてください。周囲とコミュニケーションを取っていると、実際は自分が思っているほど、相手は悪い印象を持っていないと感じられるのではないかと思います。

なにより、真摯(しんし)に取り組もうとしているあなたに、悪い印象を持つ人は少ないと思います。

「自分ができる行動」に目を向けて

体育の前日、嫌な考えをしてしまう状況にも対処しましょう。「しっかり周りを見る」「味方に声をかける」「最後まで諦めずに参加する」など、確実にできることへ意識を向けませんか? 失敗しそうなプレーではなく、自分ができる行動を意識してください。

難易度の低い目標を設定しよう

「あまりにもできなさすぎる」なんて考え方を減らすためにも、「できた」体験を多く積むのが有効です。例えば「今日は〇〇ができたらOK」など、自分にとって難易度を低く設定した目標を数多く達成できるようにすると、体育も「何とかなるかな」と思えるようになるかもしれません。

コミュニケーションの取り方、活動への向き合い方、考えの持ち方で、手放せる不安を増やしてもらえればと思います。

大倉智徳さん

おおくら・とものり 2002年からさまざまな公立高校でスクールカウンセラーを務める。現在は、小中学校などにも勤務

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