ゲームがやめられず、学校に行けなくなったり眠れなくなったり、日常生活に支障をきたす人がいる。「自分は大丈夫」と思っていても、「依存症予備軍」の可能性があるかもしれない。ゲーム依存の原因や症状を、精神科医の松本俊彦さんに聞いた。(安永美穂)
日常生活がうまくいかずにのめりこむ
―ゲーム依存の原因は?
つらい気持ちを抱えている時、嫌な思い出が頭の中に繰り返しよみがえってくる時、不安感を抱えている時などに、気を紛らわせようとしてゲームをする人は少なくありません。ゲームで少し気持ちが楽になって日常生活を頑張れるのであれば、ゲームで気分転換を図るのが適切な場合もあるでしょう。
ただ、現実の世界の人間関係がうまくいっていなかったり、ゲームのほかに楽しいと思えるものがなかったりする場合は注意が必要です。ゲームの世界でのつながりや楽しさに依存しやすくなり、日常生活に支障が出る「ゲーム依存」に陥りやすくなります。
「承認欲求」が原因になることも
―どんな人がゲーム依存に陥るのでしょうか。
特に、「オンラインゲームのコミュニティー内で認められたい」という承認欲求は依存の原因になりやすいです。以前は成績が良かったのに、難関校に進学したことで成績が伸び悩むようになった人が、ゲームの世界では皆からリスペクトしてもらえるという理由でのめり込んでしまうこともあります。

勉強や睡眠が後回しになると危険
―ゲーム依存症や「依存症予備軍」の状態になると、どんな症状が出るのでしょうか?
ゲーム依存症になると、ゲームを優先するあまり勉強などのやるべきことができなくなり、その結果として急激に成績が落ちるケースが多く見られます。普段はゲームを長時間やっていても、試験前1週間はゲームを我慢して勉強できるようであれば、まだ「予備軍」の段階だと言えるでしょう。しかし、試験前日でもゲームがやめられず勉強が手に付かないようであれば、ゲーム依存症の可能性が考えられます。
睡眠時間が短くなって朝起きるのがつらくなり、登校しても授業中に眠くなって集中できないというのも予備軍の兆候です。エスカレートして、睡眠時間を削ってゲームにのめり込み学校に行けなくなってしまう場合は、ゲーム依存症の可能性が高いと言えます。
寝るときはスマホから離れよう
―依存しすぎずに、うまくゲームと付き合っていくには?
夜通しスマホでゲームをする習慣があるとゲーム依存症になりやすいです。就寝時はスマホを手の届かないところに置き、室内を暗くして眠ることを心がけましょう。夜にゲームをする場合は、前もって時間の上限を自分で決めておく必要があります。
生活リズムが崩れて昼夜逆転するのを防ぐために、夜遅くまでゲームをした場合も朝は決まった時刻に起きることが望ましいです。
依存するほどゲームにのめり込んでしまう背景を知るために、現実の世界でどのような問題を抱えているのかにも目を向けることが大切です。適切な人に相談して解決を図りましょう。
-
松本俊彦先生
まつもと・としひこ 精神科医。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長、同センター病院薬物依存症センター長。薬物依存症や自傷行為に苦しむ人などを診療する。著書に『世界一やさしい依存症入門』(河出書房新社)など。
編集部にあなたの声を聞かせてください
この記事はLINE公式アカウント「高校生新聞編集部」をフォローしてくれている読者の声をもとにつくりました。あなたもぜひ、読者参加企画に協力してください