千葉県の高校カヌー界をリードする小見川高校と佐倉高校。少人数でストイックに練習に打ち込む小見川と、30人近い大所帯で競技を楽しむ佐倉は対照的に映る。県内トップクラスのライバル同士でありながら、国体ではチームメートにもなる、互いに刺激し合える関係だ。 (文・写真 小野哲史)

佐倉高校カヌー部の歴史は浅い。「カヌーポロ」という水上球技の同好会から2001年に部に昇格。09年に、着順を競うスプリント競技に移行した。普段は学校の4㌔西を流れる鹿島川で練習する。佐倉の豊かな自然を生かした部活だ。

昨年はインターハイ出場、国体4位入賞の実績を挙げたが、高校からカヌーを始める部員も多い。主将の中田航平君(3年)も中学までは野球部だったが、努力が実を結び、昨年はインターハイ出場を果たした。「みんながとても速く、手も足も出ずに悔しかったが、次は勝ちたい」と新たな闘志を燃やしている。

 

女子のエース小出涼子さん(3年)は、小学3年の時にカヌーと出会った。その魅力を「水面に出ることは、普段の生活ではない。自分でこいで水面を滑っていく感覚が気持ち良い。大会などで、学校以外の友達の輪が広がった」と語る。 日々、厳しい体力トレーニングを積む。冬場に川に出れば寒い。そんな時は部員みんなで声を出し、励まし合う。中田君は部について「練習する時は真剣だけど、いつもは和気あいあいとして楽しい」と言う。菅澤俊明監督は「部員は頑張っているけれど、真面目すぎる部分もある。もっと積極的に動いてほしい」と注文する。全員で一つ一つの課題を確実にクリアし、インターハイでの上位進出を目指す。

かつて水運の町として栄えた小見川地区は、豊かな自然を生かしたマリンスポーツが盛んだ。小見川高校カヌー部の部員は志村遥さん(3年)と竹内明花さん(2年)の2人。共に小学3年からカヌーを始めた。日本代表クラスの選手を数多く輩出している地元の海洋クラブを拠点として活動している。

平日の練習は、日没までカヌーに乗り、それから筋力トレーニングやランニング。そのきつさから、「普段はカヌーが楽しいと思わない」と2人は口をそろえる。竹内さんは「レースで勝った時に喜ぶためだけに、つらい練習に耐えています」と笑う。

昨年6月の関東大会では、2人が組んだペアで優勝。志村さんはシングルも制した。しかし、インターハイは強豪校に及ばず「不完全燃焼」(竹内さん)に終わり、今年度の雪辱を誓った。

ただ、志村さんはその後、世界ジュニア選手権の日本代表に選ばれた。大会の日程がインターハイと重なり迷ったが、世界ジュニア出場を決意する。「1月に出場したオーストラリアでの大会で、レベルの差を感じた。世界でもう一度戦いたかった」

志村さんは世界で、竹内さんはインターハイで。それぞれの夏の舞台を目指す。