2020年度に向けて進む大学入試改革の全体像が見えてきた。大学入試センター試験は19年度(20年1月)で廃止され、21年4月に大学に入学する人が受験する同年1月から新テスト「大学入学共通テスト」が始まる。各大学の個別試験や推薦・AO入試の改革も進んでいる。改革の背景には、大学が入学者に求める力が変わりつつあることがあるようだ。ポイントをまとめた。(西健太郎)=2017年7月10日:文部科学省の検討の進展を受け、情報を更新しました

国語・数学で記述式、日常生活も題材
英語は「書く」「話す」加え4技能評価

Qセンター試験は廃止に?

1989年度に始まった大学入試センター試験に代わり2020年度(21年1月)から新たに「大学入学共通テスト」が始まる。文部科学省は大学教育、高校教育、大学入試を一体で改革することを目指しており、共通テストもその一環だ。名称だけでなく、出題方式も大きく変わる。

「契約書」読む問題も

Q何が変わるの?

大きな変化の一つは、国語と数学でマークシート式に加え記述式問題が導入されることだ。

文科省が5月に公表した案によると国語は80~120文字程度の記述を含む小問3問程度を出題する。記述式導入の検討にあたる大学教員は「国語学習は読むこと、話すこと、聴くこと、書くこと」と話し、今のセンター試験で測れない能力のうち書く力を問うのが記述式の狙いと説明する。受験生は「論拠に基づいて自分の考えを文章にまとめる」ことが求められるという。

形式が変わるだけではない。大学入試センターが作成したモデル問題2問のうちの一つは「駐車場の使用契約書」を読んで、借り主の立場で貸し主に質問する内容などを書かせる問題。もう一つは、自治体が定めた景観維持のガイドラインなどを題材にした。高校の学習を通じ、実社会とかかわる言語活動をしてほしいという出題者の狙いが色濃く表れている。題材としては新聞記事なども想定されている。小説や評論で記述式が出題される場合もあるという。

数学は「構想力」問う

Q数学の記述式とは?

数学の記述式も3問程度。数式などを書かせる内容だ。大学入試センターの幹部は「(マークシート式と違い)解答方法を予測できなくなる。構想力を問う」と話す。数学のモデル問題には、三角比を活用して公園の銅像が最もよく見える位置を考えさせる出題があった。日常生活を題材にすることで「数学のよさ」を知ってもらう狙いもあるという。

英語は民間試験に移行

Q英語はどうなるの?

文科省は、共通テストでの実施を打ち切り、受験生に英検やTOEFLなど民間の資格・検定の中から国が認定した試験を受けてもらう考えだ。センター試験で測ってきた「読む」「聴く」に加え、「話す」「書く」を含む「4技能」を評価するためだという。

文科省の担当者は「日本人全体も、高校生も、スピーキング、ライティングの能力が十分でない。高校教育も大学入試も一体で変わっていくべきだ」と「4技能評価」が必要な理由を語る。録音機器を使って共通テストでスピーキングなどの試験を実施することも検討したが、約50万人が受験する試験での実施は不可能と判断したようだ。

だが、新テスト開始から4年間(20~23年度)は、共通テストも存続させ、各大学が共通テストと民間認定試験のどちらを利用するかを判断することになった。両者を併用することも可能だ。文科省は2020年度以降は民間試験に一本化したい考えだったが、共通テストの存続を求める声が全国高校長協会から寄せられたり、20年度の認定試験の実施状況を検証したうえで共通テストでの英語の廃止の可否を判断すべきと国立大学協会が指摘したことなどに配慮した。

Q民間試験をいつ受けるの?

大学入試として活用できる資格・検定試験を国が認定する。大学受験に利用できるのは高校3年生の4~12月の2回までの受験結果だ。受験生は資格・検定試験の出願時に、大学入試に利用することを申請し、各試験の実施団体が大学入試センターに成績を送付する方法が検討されている。だが、課題も多い。受験生には民間試験の検定料の負担がかかる。試験によっては、実施場所が限られて、地方の受験生が不利になる恐れもある。国は試験実施団体に受検料を安く抑えるよう求める考えという。浪人生への対応はまだ決まっていない。

大学入試センターから各大学には認定試験の結果と、CEFR(セファール)という国際基準に対応した段階別が提供される。CEFRは6段階あり、異なる資格・検定の成績の比較が可能なる半面、受験生の成績は一部の段階に集中する可能性が高く、日本私立大学連盟は「(入試の合否判定に利用するには)さらに細かな多段階評価を導入するのが望ましい」としている。

今秋5万人に試行試験

Q他の教科は?

国語・数学を含め、マークシート方式の出題も、思考力・判断力・表現力をより必要とする問題に変えるという。20年度から23年度まで存続する共通テストの英語も、出題内容は、4技能評価を意識した改善するという。

大学入試センターは今年11月に現役高校生5万人を対象に、プレテストを実施する。国語、数学は2年生、理科、地歴・公民は3年生を主対象にする方針だ。英語のプレテストは18年2月の実施になりそうだ。いずれも高校生の成績などをふまえて、難易度や採点基準などを詰めるそうだ。

大学入学共通テストの国語の記述式のモデル問題の一部。大学入試センターのウェブサイトに掲載されている

 

各大学の入試改革も進む

共通テストが変わるのに加え、各大学の一般入試や推薦・AO入試の改革も進んでいる。

国立大で「高度な記述式」

文科省は、一般入試でも、高校での論述や討論などの学習を踏まえた思考力・表現力・判断力を問う出題を求めている。国立大学協会は全国立大学に「高度な記述式試験」を課してもらう方針だ。従来も記述式問題の出題は多かったが、協会では各大学に出題内容の見直しを促している。20年度からの実施を目標とするが、大学によってはそれまでの入試でも傾向に変化があるかもしれない。

私立大も出題見直しを研究

私立大学でも、文科省の委託を受けるなどして入試改革の検討が進む。早稲田大学はほかの国私立大学と協力し、単純な知識ではなく、思考力などを問う地歴・公民の出題方法を開発している。関西学院大学などは、一般入試では測りづらかった「主体性」を評価しようと、高校時代の経験をインターネット上から入力してもらう電子ポートフォリオを入試に活用することを検討している。

推薦・AO拡大の動きも

推薦・AO入試をめぐっては、私立大に比べて定員に占める比率の少なかった国立大で、導入や定員拡大の動きが目立つ。

東京大学と京都大学が16年度から、大阪大学が17年度から推薦またはAO入試を導入した。名古屋大学や東北大学は、導入済の推薦・AO入試の定員を全体の3割に拡大する目標を立てている。