国際数学オリンピックで銀メダルの佐伯祐紀君(東京・開成高校3年)

7~8月に開催された国際科学オリンピックの6分野(数学、化学、生物学、物理、情報、地理)で、日本代表として出場した高校生26人全員がメダルを獲得する快挙を果たした。国際数学オリンピックの銀メダリストの佐伯祐紀君は、中1からオリンピック出場に挑戦してきた。くじけなかった秘訣(ひけつ)や、出場を目指す人へのアドバイスを聞いた。(文・山口佳子、写真・幡原裕治)

――国際数学オリンピックの準備は、いつごろから始めましたか?
「中1の時にジュニア数学オリンピックに初挑戦しました。1年目は予選を通過できなかったのですが、中2で本選を通過。高1では代表選抜に選ばれるなど、国際数学オリンピックの勉強にはずっと取り組んできました」

――国際数学オリンピックの勉強と高校数学との違いは?
「国際数学オリンピックは高校で学ぶ数学とは全く違います。例えば、微分・積分などを使う問題は出題されません。なぜなら、微分・積分を中学高校で学ばない国もあるからです。だから、国際数学オリンピックでは日本の数Ⅲは知らなくても解けます。日本の高校数学では知識に基づいて正しく計算をすることが求められますが、数学オリンピックはひらめきを要求される問題ばかりです。パズルに似ているかもしれません」

――中1からずっと取り組んで来た国際数学オリンピックへの挑戦。くじけそうになったことはありませんか?
「なかなか解けない問題に何時間も取り組んでいて、気分転換にお風呂に入った時などに『パッ』とひらめいた時の感覚が好きです。長年の勉強は大変でしたが、ひらめきの瞬間があったからこそ、くじけることなく続けられたと思います」

――世界大会はどうでしたか?
「国際数学オリンピックが開催されたのはタイです。チェンマイを観光したり、他国の生徒との交流は有意義でした。開会式には国際科学オリンピックの別科目で金メダルをとってから数学に参加したカナダの高校生と出会い、世界にはもっともっと優秀な人がいるんだなぁ……と実感しました。世界大会までの道のりは長かったけど、大会そのものはあっという間に終わってしまった感じです」

――将来は?
「ひらめきで解く国際数学オリンピックに出題されたような数学の問題は好きでしたが、大学で学ぶ数学は、より抽象度が増すなど質が違うような気がします。だから大学では数学の道には進まず、医学部を目指すつもりです」