宮崎県立宮崎西高校は毎年、夏休みの課題の一つとして「JICA国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト」を活用しており、2021年度は特別学校賞を受賞した。優秀賞に輝いた同校生徒にエッセイ執筆の動機や心掛けたことなどを語ってもらった。(中田宗孝、写真は学校提供)

夏休みの課題としてJICAエッセイコンテストに挑戦

宮崎西高校は2015年度から、1、2年生の夏休みの課題として、JICAエッセイコンテストを採用している。同校では10のコンテストの中から生徒自身が1つ選択し、夏休みをかけて執筆してもらっている。岩下裕一郎先生(国語)は、「多種多様な創作課題を用意することで、生徒が書きたいと思う内容を選びやすくしています。JICAエッセイコンテストは、国際的な視点を育むために採用しています」と話す。

2021年度は、1、2年生83人がJICAエッセイコンテストを選んだ。岩下先生によると、人気の高さをうかがわせる参加人数だったという。

カンボジアに絵本を贈る活動、知ってほしい

大城冴和さんは、1年生だった昨夏の課題でJICAエッセイコンテストを選択した一人だ。「絵本が繋ぐ架け橋」と題した大城さんのエッセイは全国の上位6作品に入り、最優秀賞につぐ優秀賞に輝いた。

エッセイには、大城さんが小学校1年生の時から取り組んでいる、カンボジアに絵本を届ける活動体験を記した。「絵本を届けるボランティア活動は、日本で広く知られてはいません。さまざまな国際協力活動を行うJICAのエッセイコンテストに僕が参加することで、活動の意義やカンボジアの現状を知ってもらえるよい機会になればと思いました。それが今の自分ができる『小さな一歩』だと考えたのです」

2021年度JICA国際協力中学生・高校生エッセイコンテストで優秀賞を受賞した大城冴和さん

大城さんたちの活動は、絵本にカンボジアの公用語であるクメール語で書かれたシールを貼る作業を行った後に発送するというものだ。「ボランティア団体から絵本と制作キットが自宅に送られてきて、シールを切って絵本に貼っていくんです。1冊30分くらいかかるのですが、幼いころから楽しみながらやっていました」

経験と気持ちが伝わる「オンリーワンの言葉」にこだわり

絵本の送り先であるカンボジアの歴史を調べていくうちに、大城さんに気持ちの変化が生まれた。カンボジアは、長期にわたる内戦の影響で教育環境の整備が進まなかったこともあり、国民の識字率が低い。その結果、地雷への注意を促す看板の文字が読めないことによる死亡事故が起こったり、薬の処方箋が理解できないことによる誤飲が多発したりしている。「読み書きができることがとても重要なことを知りました。ただ楽しくてやっていた絵本を送る僕の活動も、現地の子供たちにとって役立つ、意義のある行動だと実感したんです」

エッセイ執筆にあたり、大城さんが特に意識したのは「自分の経験や心の有り様を文章に込める」ことだった。「カンボジアのことを書くだけなら、インターネットを活用すれば比較的容易にできます。でも、それではただの調べ学習で終わってしまう。エッセイを書くときに大事なのは、自分がどんな思いで絵本を作っていたのか。自分の実体験が読む人の心に響くように、オンリーワンの言葉を生み出すつもりでエッセイを仕上げました」

表彰式で全国の受賞者の活動から刺激

コンテストの上位受賞者が全国からオンラインで参加した記念式典では、他校の受賞者との交流から大きな刺激を受けた。「受賞者の中には、カンボジアに対して環境衛生の面から支援した人、自然環境の面から支援を行った人がいました。色々な側面から支援できるんだと知り、自分の視野が広がり、俯瞰的かつ柔軟な国際的視点を持ちながら自分に何ができるか考えていくことが大切と知りました」

大城冴和さんと担当の岩下裕一郎先生

受賞者の中には、異国の地で取り組んでいた活動をエッセイにした生徒もいた。「日本の中だけで活動する自分にとっては、海外で活躍する方々が大きな壁のように感じました。僕もコロナ禍でなければ留学したいとずっと思っていたんです」と明かす。それでも大城さんは、「日本にいてもできることがある」と力を込める。僕のエッセイを通じて誰かが、日本にいたとしてもやれることがあるじゃないか、自分もやってみたいという気持ちになれば」と願っている。同時に、カンボジアへ思いを馳せてもいる。「いつかカンボジアを訪れて、僕が作った絵本を実際に読んでくれた人に会って言葉を交わしてみたい。それが自分の小さな夢でもあります」

「小さな一歩」評価されうれしい

大城さんは、優秀賞受賞を「嬉しかったです。自分にできる小さな一歩として、コンテストに参加しました。この小さな一歩をきちんと評価していただけたというのは大きな自信になりました」と振り返る。

2022年度のJICAエッセイコンテストの募集テーマは「世界とつながる私たち~未来のための小さな一歩~」。自身の活動を知ってもらう「小さな一歩」としてエッセイを執筆した大城さんのように、身近なところにから世界とつながろうとしたエッセイが多く集まりそうだ。

宮崎県立宮崎西高校

宮崎西高校

1974年(昭和49年)創立。校訓は「誠実 敬愛 創造」。2020年度から文部科学省よりスーパーサイエンスハイスクール指定。未来イノベーションをけん引する人材育成のための「宮西型STEAMプログラム」の開発を進める。2021年度の主な進路状況は、東京大学7名、京都大学7人、大阪大学7人など。

JICA国際協力中学生・高校生エッセイコンテストの2022年度募集テーマは「世界とつながる私たち―未来のための小さな一歩―」、締め切りは中学生の部、高校生の部ともに9月11日(当日消印有効)です。詳細はウェブサイトをご確認ください。生徒が原稿のテーマや構成を考えるのに役立つ「エッセイ書き方ガイド~実践ワークシート~」(学校でのコピー配布可能)もサイトからダウンロードできます。